リピート領域(繰り返し配列)について

Posted on 2024年 11月 6日

遺伝子の中には、同じ配列が繰り返される「リピート領域(繰り返し配列)」が存在します。これらの領域はタンパク質をコードするわけではありませんが、ゲノムの構造や進化、そして遺伝子発現の調節において重要な役割を持っています。リピート領域にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴と機能があります。

主なリピート領域の種類

  1. サテライトDNA
  • 特徴:数百〜数千の塩基対が繰り返される長い配列。特に染色体の中心部(セントロメア)や末端部(テロメア)に多く見られます。
  • 役割:染色体の構造維持に関与し、セントロメアでの染色体の分離や、テロメアでの染色体の安定性確保に寄与しています。
  1. ミニサテライト
  • 特徴:10〜60塩基程度の短い配列が数十〜数百回繰り返される。
  • 役割:個人ごとに異なる繰り返しのパターンを持つため、DNA指紋などの個人識別に利用されます。特に、法医学や親子鑑定などで重要な役割を果たします。
  1. マイクロサテライト(短鎖反復配列、STR)
  • 特徴:2〜6塩基程度の非常に短い配列が数回〜数十回繰り返される。
  • 役割:ゲノム内の多様性を生み出すため、進化や適応の研究に役立ちます。また、個人ごとに異なるパターンを持つため、ミニサテライトと同様に個人識別や親子鑑定などに利用されます。
  1. トランスポゾン(ジャンピング遺伝子)
  • 特徴:DNA内を移動する性質を持つ配列で、「LINE」や「SINE」などの種類があります。
  • 役割:ゲノム内での位置を変えることで、突然変異を引き起こすことがあり、進化の過程で遺伝子の多様性を生む要因となります。また、トランスポゾンが大量に含まれるゲノム領域が、全ゲノムの40%程度を占めるとも言われています。

リピート領域の役割と意義

  • 遺伝的多様性:リピート領域の繰り返しの回数が変動することで、ゲノムの多様性が生まれ、進化に寄与します。
  • 染色体の安定性:セントロメアやテロメアなどの特定の部位にリピート領域があることで、染色体の構造を安定させる役割を果たします。
  • 遺伝病:リピート領域が過剰に増幅されると、特定の遺伝病の原因になることもあります。たとえば、ハンチントン病などの遺伝病は、特定のリピート配列が異常に増えることで発症します。

まとめ

リピート領域は、DNA中の繰り返し配列で、ゲノムの構造や遺伝的多様性、染色体の安定性に重要な役割を担っています。リピート領域は、進化や適応において遺伝的な多様性をもたらし、また個人識別や法医学、さらには遺伝病研究にも役立っています。