マイクロアレイ検査について(廃れてきた技術)

Posted on 2024年 11月 9日

マイクロアレイ検査は、数千から数百万のDNA配列を一度に分析することができる遺伝子解析技術です。小さなチップ上に多数のDNAプローブを並べ、サンプル中のDNAやRNAと結合させることで、特定の遺伝子の発現や遺伝的変異を調べることができます。マイクロアレイ検査は、遺伝子の発現解析、遺伝的異常の検出、疾患関連遺伝子の発見などに利用されます。

マイクロアレイ検査の仕組み

  1. DNAプローブの配列
  • マイクロアレイチップには、特定の遺伝子や配列に対応するDNAプローブ(短いDNA配列)が高密度に配置されています。それぞれのプローブが特定の遺伝子や配列に対応しており、サンプル中の標的分子を検出するための「アンテナ」の役割を果たします。
  1. サンプルの標識
  • 調べたいサンプルのDNAまたはRNA(mRNAなど)は蛍光色素で標識され、これにより検出感度が高まります。例えば、がん細胞と正常細胞のmRNAを異なる色の蛍光色素で標識し、両者の遺伝子発現の違いを比較することができます。
  1. ハイブリダイゼーション
  • 標識したサンプルをマイクロアレイチップ上に適用し、チップ上のプローブとサンプル中のDNAやRNAが結合(ハイブリダイゼーション)するのを待ちます。特定のプローブと結合することで、サンプル中にその配列が含まれていることが示されます。
  1. 蛍光シグナルの測定
  • ハイブリダイゼーション後、チップをスキャンして蛍光シグナルを測定します。プローブごとの蛍光の強さから、各遺伝子の存在や発現レベルを定量的に把握することができます。

マイクロアレイ検査の用途

  1. 遺伝子発現解析
  • マイクロアレイは、異なる条件下での遺伝子発現の違いを調べるために使われます。例えば、健康な細胞と病気の細胞の遺伝子発現プロファイルを比較することで、病気に関与する遺伝子を特定できます。
  1. 遺伝的変異の検出
  • 染色体のコピー数異常(例えば、重複や欠失)や、一塩基多型(SNP)を検出するために用いられます。これにより、遺伝性疾患の診断や、がんの特異的変異の検出が可能です。
  1. 遺伝子多型の解析
  • SNPや他の遺伝子多型の分布を解析し、特定の遺伝的背景が疾患リスクに与える影響を評価します。個別化医療や薬剤応答性の評価にも利用されています。
  1. がんの研究と診断
  • マイクロアレイは、がん細胞で異常に発現する遺伝子を特定するために使われます。これにより、がんの種類や進行度に応じた治療法の選択や、予後の予測が可能になります。

マイクロアレイ検査の利点と限界

  • 利点
  • 大量の遺伝子を一度に解析できるため、広範な遺伝子の発現や変異を効率的に調査できます。
  • 蛍光シグナルによる定量的なデータ取得が可能で、比較的短時間で結果が得られます。
  • 限界
  • 配列が事前に決まっているため、未知の配列や新規変異の検出は難しい。
  • 次世代シーケンシング(NGS)技術の登場により、より包括的な遺伝子解析が可能になってきており、マイクロアレイ検査の使用範囲が限定されつつあります。

まとめ

マイクロアレイ検査は、特定の遺伝子や配列の発現レベルや変異を迅速かつ効率的に調べるための技術です。遺伝子発現解析、疾患関連遺伝子の特定、遺伝的異常の診断など幅広い用途に利用され、今なお多くの研究や臨床分野で活用されています。