巻き爪・陥入爪の違いとフェノール法による手術について【医師監修】

巻き爪・陥入爪の違いとフェノール法による手術について

足のトラブルはさまざまですが、なかでも巻き爪と陥入爪はとても多く見られる症状です。悪化すると強い痛みや炎症を引き起こし、歩行が困難になるケースも少なくありません。この記事では巻き爪と陥入爪の違いと原因、治療法についてを医師が解説します。

巻き爪と陥入爪とは

足の爪のトラブルとして多く見られる「巻き爪」と「陥入爪(かんにゅうそう)」。混同されがちな症状ですが、巻き爪と陥入爪は異なる状態とされています。

巻き爪は足の爪が内側に湾曲し、皮膚にくい込むことで強い痛みを生じます。軽い症状(湾曲)であれば爪切りによって一時的に痛みが治まるため、放置してしまう方がほとんどでしょう。

一方、陥入爪は爪(爪甲)の先端角部位が皮膚にくい込み、炎症や化膿を生じた状態のことをいいます。悪化すると出血や肉芽などをともない、歩行が困難なほど強い痛みを引き起こします。

巻き爪と陥入爪は、おもに足の母指(親指)に生じますが他の足指や、手に生じることもある爪の病気です。また巻き爪により、陥入爪を引き起こすケースも少なくありません。

巻き爪と陥入爪、いずれもセルフケアによる根本治療は難しいとされ、痛みが軽度であってもすぐに病院で治療を受けることが大切です。

痛い・つらい!巻き爪と陥入爪の原因

巻き爪と陥入爪の原因はいずれも「深爪などの誤った爪切り」「サイズの合わない靴」「体重増加による足の指への負担」「水虫」などが挙げられ、また遺伝的要素とする爪の形状が原因であることも少なくありません。

女性の場合、ハイヒールや妊娠中の体重増加により、つま先に圧がかかることも巻き爪や陥入爪の原因となるため注意が必要です。

巻き爪と陥入爪のセルフケアや応急処置

巻き爪や陥入爪を避けるためには、正しい爪切りをおこなうことが大切です。爪のくい込みを少しでも減らそうとした結果、深爪となり爪のくい込みが悪化するケースも多く見られます。陥入爪の場合、誤った爪切りによりトゲ状の爪が皮膚を傷つけ、細菌感染の可能性があるため注意が必要です。

爪切りは専用のニッパーを使用

巻き爪専用の爪切りニッパーなどで、「爪の先を指の形に沿わせずまっすぐ切る」「爪両端を直角に」また、指の先から少し爪が出る程度に爪切りをするよう心がけましょう。

テーピングによるセルフ矯正

爪のくい込みがある爪の横の皮膚に、伸縮タイプのテーピングを貼ることで巻き爪の矯正をおこなう方法です。テーピングを引っ張るよう螺旋状に足の指に巻きつけ固定をおこないます。テーピングのもつ張引力の原理により、皮膚にくい込んだ爪を引き上げ刺激を減らす矯正となります。

軽度の巻き爪であれば改善する場合もありますが、テーピングの失敗により症状が進行してしまうケースもあるため注意が必要です。

コットンによるセルフ矯正

爪のくい込み部位にコットンを少しずつ詰めることで、爪を持ち上げるセルフ矯正です。コットンパッキングとも呼ばれています。コットンによる矯正は誰でも、比較的簡単におこなうことができる巻き爪矯正です。また、巻き爪の応急処置として覚えておくと良いでしょう。しかし、すでに炎症や化膿、肉芽を生じている場合は、悪化を招くことがあるため病院で診察を受けることが大切です。

なお医療機関によってはコットンパッキングと似た、ソフラチュール法による治療をおこなうケースもあります。硫酸フラジオマイシンという抗生剤を塗り込んだガーゼを、くい込みの強い爪と皮膚の間に挟むことで痛みを和らげます。

巻き爪と陥入爪は何科を受診?

巻き爪と陥入爪が疑われ足の指が痛みだした場合、症状によって受診科目が異なります。爪の変形やくい込みが少なく、炎症や水疱など皮膚に異常がある場合は皮膚科を。爪が大きく湾曲し、爪が皮膚に強くくい込み炎症や化膿、肉芽などが生じているのであれば形成外科を受診すると良いでしょう。

病院でおこなう巻き爪と陥入爪の治療法

爪が大きく湾曲したり変形することで足の皮膚にくい込み、強い痛みを生じている場合、形成外科での治療が必要となります。

病院でおこなわれる巻き爪や陥入爪の治療法はおもに、「ワイヤー法」と「フェノール法」が挙げられます。いずれもメリット・デメリットがあり、また適応が異なるため医師の診察によって治療法が異なります。

ワイヤー法による巻き爪・陥入爪の治療法

ワイヤー法による巻き爪・陥入爪の治療法とは、爪の2箇所に小さな穴をあけ、超弾性ワイヤーを留置する治療法です。ワイヤーが元の形状に戻ろうとする弾性により、皮膚にくい込んだ爪を浮かせる矯正治療のひとつとされています。

ワイヤー法による巻き爪と陥入爪の治療は、抜爪などの手術が不要です。しかし、約1ヶ月〜1.5ヶ月ごとにワイヤーを交換する必要があり、爪が正常な状態へ改善するのには約3〜6ヶ月かかります。また、再発することも少なくありません。なお、患部が化膿している巻き爪・陥入爪へは適応されない治療法です。

フェノール法による巻き爪・陥入爪の治療法

フェノール法とはフェノールと呼ばれる薬剤を使用した手術です。フェノールは古くから消毒液として使用される薬剤であることから、化膿をともなう巻き爪や陥入爪にも適応できます。また、フェノールは強力に組織(たんぱく質)を焼灼する作用を持つ薬剤となります。

くい込む爪を一部抜爪したのち、フェノールを塗布することにより爪の成長を促す爪母(そうぼ)を焼灼します。くい込んでしまう爪を生えてこないようにする、巻き爪や陥入爪の根本治療といえるでしょう。

ヒロクリニック形成外科・皮膚科によるフェノール法手術の流れ

①麻酔

爪のくい込みがある患部に局所麻酔または患肢の付け根に伝達麻酔をおこないます。

②部分抜爪

くい込んでいる爪(爪甲)を部分的に抜爪をおこないます。(症状によっては皮膚も一部切除)

③フェノール処理

綿棒にフェノールを含ませ、爪母へ塗布します。

④手術終了

フェノール法による巻き爪・陥入爪の手術はほとんどの場合、縫合処置を必要としません。手術部位へ包帯を巻き、治療は終了です。手術後も痛みは少なく、徒歩による帰宅が可能とされています。

フェノール法による巻き爪・陥入爪の手術当日の注意点

抜爪手術と聞いて治療をためらう方も少なくないでしょう。しかし、フェノール法による巻き爪・陥入爪の手術は痛みの少ない根本治療といわれています。巻き爪・陥入爪の手術のあとは長時間の歩行やスポーツは避け、安静を心がけてください。

●手術直後より歩行が可能です。当日はつま先の細い靴やハイヒールの着用は避けてください。

●手術当日よりシャワー浴をおこなうことができます。患部を清潔に保ち、処方された内服薬や外用薬がある場合、医師の指示通りに使用しましょう。

●飲酒や喫煙は控えましょう。

●帰宅後、足をなるべく高い位置に置くと痛みが軽減します。就寝時も手術部位の足の下にクッションなどを入れると良いでしょう。

フェノール法による巻き爪・陥入爪のデメリットや後遺症

フェノール法は約20年前より多くおこなわれている手術法です。フェノール法により重篤な後遺症が生じるケースは少ないとされています。しかし手術後に爪の幅が狭くなったり、変形した爪が生えてくる、また巻き爪・陥入爪の再発の可能性もゼロではありません。

まとめ

爪はヒトの身体の中でとても小さなパーツです。しかし、爪の役割は「物をつかむ」「歩行時のバランスをとる」など生きていく上でとても重要な役割を持ちます。

また巻き爪や陥入爪などの足のトラブルにより、その痛みをかばうことで腰や膝に負担がかかり腰痛・関節痛を引き起こすケースも少なくありません。

軽度な巻き爪や陥入爪であっても、痛みが生じた際はなるべく早めに病院で診察を受けることが大切です。巻き爪・陥入爪の痛みから一日も早く解放され、フットワークの軽い健やかな歩行を目指しましょう。


【参考文献】

記事の監修者

ヒロクリニック 岡博史 先生

ヒロクリニック 岡博史 先生

“医療にITを組み合わせることで常に時代にアンテナをはり、
医療の可能性を最大限に広げ、新しい医療サービスの提供に取り組んでいます。”

経歴

1996 慶應義塾大学医学部 卒業             
2002 慶応義塾大学病院 皮膚科            
2008 ヒロ皮フ形成クリニック(H27年8月ヒロクリニックへ名称変更) 開院・院長就任
2010 医療法人社団福美会 設立・理事長就任
2011 株式会社Hiro Japan 設立・取締役就任(兼任)

資格

1996 医師免許取得
2003 皮膚科専門医 取得
2017 産業医 取得

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