腋臭症(わきが)とは何か
腋臭症(わきが)は、医学的には「腋窩臭症(axillary osmidrosis)」あるいは「アポクリン臭症(apocrine bromhidrosis)」と呼ばれる疾患で、わきの下から強く独特なにおいが発生するのが特徴です。このにおいの原因は、アポクリン汗腺(apocrine sweat glands)という特殊な汗腺の働きによるものです。アポクリン汗腺は、わきの下、乳首、性器周辺などの限られた部位に分布しており、思春期以降に活性化されます。
アポクリン汗腺から分泌される汗は、エクリン汗腺(eccrine glands)からの汗と異なり、粘り気があり、タンパク質や脂質を多く含んでいます。この汗が皮膚表面の常在菌によって分解されることで、いわゆる「スパイシー」「ムスキー(麝香のような)」「硫黄臭」などと表現されるにおいが発生します。

社会的・心理的影響
腋臭症は身体的な健康に直接害を与えるものではありませんが、対人関係や社会生活において強いストレスを引き起こす可能性があり、心理的な負担やQOL(生活の質:quality of life)の低下を招くことが少なくありません。特に清潔感や身だしなみが重視される日本社会においては、腋臭に対する感受性が高く、悩みを抱える人が多いとされています。

腋臭症の原因とリスク因子
遺伝的要因

腋臭症は遺伝性の強い疾患とされており、日本人の約10%が発症していると推定されています。特に両親のいずれもが腋臭症の場合、子どもが発症する確率が高まります。この遺伝的傾向は、ABCC11遺伝子(ABCC11 gene)の多型(polymorphism)と関連していることが知られています。

ホルモンの影響
アポクリン汗腺は性ホルモン(sex hormones)によって制御されており、思春期を境に活動が活発になります。特に女性の場合は、生理(月経)や妊娠・出産といったホルモン変動のある時期に、症状が一時的に悪化することがあります。一方で、閉経後にはエストロゲン(estrogen)濃度が減少するため、症状が自然と軽快するケースもあります。

生活習慣
動物性脂肪を多く含む食事、飲酒、喫煙、慢性的なストレスといった生活習慣も腋臭症の症状を悪化させる原因になります。これらは汗腺の活動を直接刺激したり、汗の成分を変化させることで、においを強くする可能性があります。

自己チェックの方法
身体的特徴
腋臭症の傾向を示す身体的な特徴として、以下のようなものが挙げられます。
・湿った耳垢(moist earwax):アポクリン汗腺の活動が活発な人ほど、耳垢が湿っている傾向があります。湿性耳垢の人のおよそ80%が腋臭症であるとする報告もあります。
・耳の毛(ear hair):アポクリン汗腺の活性と相関する可能性があります。
・濃く太いわき毛(thick underarm hair):細菌が繁殖しやすく、においの温床になります。
・衣服の黄ばみ(yellow sweat stains):アポクリン汗に含まれるタンパク質や鉄分が酸化し、衣類に黄ばみを残すことがあります。
・毛に付着する白い結晶(white residue on hair):結晶化した汗成分である可能性がありますが、整髪剤などによる残留物の可能性もあるため注意が必要です。
・家族歴(family history):両親ともに腋臭症である場合、子にも発症する可能性が非常に高まります。

ガーゼテスト(gauze test)
においの強さを確認する簡易的な自己評価方法として、ガーゼを使った検査があります。
レベル1:においなし
レベル2:鼻に近づけてようやくわかる程度(非常に軽度)
レベル3:至近距離でにおいが感じられる(軽度)
レベル4:少し離れてもにおいがする(中等度)
レベル5:腕を伸ばした距離でもにおいが感じられる(重度)

女性に多い腋臭症の悩み
女性の場合、生理周期や妊娠などのホルモン変化によって腋臭症の症状が強くなることがあります。ただし、自分のにおいには慣れてしまって気づきにくい点や、においに関する話題がタブー視される風潮から、医療機関の受診をためらう人が多いのが現状です。実際には女性の腋臭症も決して稀ではなく、適切な治療によって改善が可能な医療対象の疾患です。

予防と生活習慣の改善
食事の見直し
動物性脂肪(脂身の多い肉、乳製品、揚げ物、加工食品)の摂取を控え、香辛料やにおいの強い食品(にんにく、キムチなどの発酵食品)も避けることが勧められます。一方で、植物性タンパク質や魚を中心とした食事は、においの発生を抑える効果が期待されます。
衛生と衣類
わきの下をこまめに拭き、通気性の良い素材の服を選び、締めつけの強い服を避けることが大切です。また、わき毛の処理によって汗や細菌の蓄積を抑えることもにおい対策に有効です。

アルコールとタバコの回避
アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒド(acetaldehyde)が汗に含まれると、においが強くなります。タバコは汗腺を刺激するほか、タール臭が加わるため、においが悪化します。
運動と睡眠
有酸素運動(aerobic exercise)により老廃物の排出が促され、におい成分の蓄積を減らす効果があります。また、十分な睡眠によって自律神経や肝機能が整い、アンモニアなどのにおい成分が減少します。

医療的および外科的な治療
軽度(レベル1~2)の非外科的治療
・高密着型の抗菌クリーム(例:メンソレータム リフレアなど)
・薬用ボディソープの使用
・医薬部外品として認可された制汗剤やデオドラントの使用

医師の診察が必要なケース
生活改善や外用剤で効果が出ない場合は、皮膚科や美容外科への受診が勧められます。以下のような治療法があります。
・ボツリヌス毒素注射(Botulinum toxin injections):汗腺への神経伝達を一時的に遮断し、発汗を抑制します。
・電気分解法(electrolysis):電気を用いて汗腺を破壊する方法。
・外科的切除(surgical excision):汗腺を直接切除する最も確実な方法で、再発率が低いとされています。

ヒロクリニックでの外科的治療
概要
埼玉県川口市にあるヒロクリニックでは、美容外科出身の専門医による腋臭症の外科的治療を提供しています。特に健康保険が適用される患者にとっては、効果と費用のバランスに優れた選択肢となっています。

費用の目安(現時点:2025年3月28日)
・保険適用(3割負担):両わきで約41,490円(薬代、診察、術後ケア含む)
・自費診療:約20万〜50万円
※オンライン診療では向精神薬の処方は行っていません。
手術法
主に以下の2つの術式を採用しています。
・剪除法(せんじょほう/excision technique):広く用いられる信頼性の高い方法
・皮弁法(ひべんほう/skin flap method):健康保険適用あり
術式の選択は、症状の重さ、においの強さ、保険適用の可否、患者の希望により決まります。

科学的根拠に基づく治療効果
ベトナム・ハノイでの局所切除手術(2019年)
ハノイで実施された臨床研究では、43人の腋臭症患者を対象にした局所切除手術の効果が検証されました。
・手術法:わきを楕円形に切開し、皮膚と皮下組織を切除後、皮膚を再建
・平均追跡期間:8ヶ月
・においの改善:90.3%が良好〜極めて良好と評価
・わき毛の減少:93.6%の部位で確認
・発汗の減少:全患者で認められた
・QOLの改善:DLQI(皮膚疾患生活指標)スコアが16.1から3.3に改善
・患者満足度:87.1%が満足、12.9%が普通と回答
合併症と対応
・血腫(hematoma):3例
・皮膚壊死(skin necrosis):2例
・上肢のむくみ(edema):3例(挙上により改善)
合併症の多くは、抗凝固薬を服用していた患者と、術後に腕の固定を守らなかった患者に集中して発生しました。

手術法の利点
・医師の目で確認しながら切除するため、再発のリスクが低い
・脂肪吸引などのブラインド法(blind techniques)に比べて治療の確実性が高い
・感染や運動制限、ケロイドなどの重大な合併症は見られず、ほとんどの傷跡は目立たず美容的にも許容範囲でした
お問い合わせ・予約
ヒロクリニックへの相談・予約については以下の連絡先をご利用ください。
電話:048-240-6600
アクセスや詳細は、ヒロクリニックの公式ウェブサイトをご覧ください。

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引用文献
- ワキガ手術・多汗症治療|川口市の形成外科・皮膚科 ヒロクリニック. (2021/09/10). Retrieved 28 March 2025, from https://www.hiro-clinic.or.jp/osmidrosis/
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