カサカサやかゆみをともなう皮膚の乾燥は気候や強力な脱脂力をもつ石鹸の使用など、さまざまな原因により皮膚の水分が失われることで年齢を問わず引き起こります。この記事では乾燥肌の原因・対処法や、乾燥が招く湿疹や炎症についてを医師が説明します。
<目次>
乾燥肌とは
「肌が乾燥してカサカサする」「皮膚が乾いてかゆい」これらの症状を一般的に乾燥肌といい、医学的には皮脂欠乏症や乾皮症とされています。乾燥肌は皮膚の水分や皮脂が何らかの原因によって不足することで引き起こり、赤ちゃんから高齢者まで年齢や性別を問わず、誰でも全身に生じる症状といえるでしょう。
ヒトの皮膚には皮脂腺があり、そこから天然の保湿成分ともいえる皮脂が分泌され、肌を乾燥から守っています。そのため乾燥によるカサカサや、かゆみなどの肌トラブルは、皮脂腺の少ない腕や手の甲、下肢の前面などに多く生じます。
乾燥肌は放置することで皮剥けや炎症・ひび割れなどを招くこともあり、また乾燥が進むことで皮膚が敏感になり、少しの刺激でも強いかゆみを引き起こすことも少なくありません。乾燥肌が進行すると、とても強い赤み・かゆみや、ぶつぶつとした湿疹などを生じる「乾燥性皮膚炎」や「皮脂欠乏性湿疹」へと悪化します。また、乾燥性皮膚炎や皮脂欠乏性湿疹は繰り返しやすい皮膚疾患となり、長期の治療が必要です。
乾燥によるカサカサ肌のおもな原因
乾燥肌の原因はさまざまです。秋や冬など時季的なもの、エアコンや紫外線、熱い温度での入浴・脱脂力の強い石鹸などの外的要因や、体質・加齢による皮脂分泌の減少などが挙げられます。
皮膚は表面から表皮・真皮・皮下組織の構造です。表皮は最も外側にある角質層・有棘層・顆粒層・基底層からなります。基底層で分裂した角化細胞が皮膚代謝(ターンオーバー)によって約28日間かけて角質層まで押し上げられ、体外へと排出されます。
角質層には身体の水分を保持するバリア機能があります。しかし加齢や環境ダメージなどにより、皮膚代謝が正常に行われないことで古い角質が剥がれず堆積してしまうと、バリア機能を失い、皮膚の乾燥、カサカサやかゆみを引き起こします。
これらのことから乾燥肌は皮膚代謝が乱れがちで、皮膚の水分保持が正常に行われない高齢者に多くみられる症状です。しかし乾燥肌は高齢者だけでなく、赤ちゃんにも生じます。赤ちゃんの角質層は未熟であり、またお母さんの体内との環境変化に順応できず、乾燥やカサカサを招くとされています。
乾燥肌の悪化を招く生活習慣
- 入浴:高温の湯につかる・ナイロン素材などのボディタオルでの過度な摩擦・脱脂力の強い石鹸
- 湿度:室内の湿度が40%以下・電気毛布の使用・コタツなど
- 衣服:肌への刺激が強い素材(ナイロンなどの化学繊維)
- 食事:刺激物やアルコール(体温上昇によるかゆみの増幅)
頭皮の乾燥の原因と皮膚疾患
頭皮はヒトの身体の中でも皮脂腺の最も多い部位です。しかし、頭皮も皮膚代謝の乱れや頭皮に合わないシャンプー剤などにより、乾燥やそれにともなうかゆみを生じることも少なくありません。
頭皮が乾燥することでかゆみが生じ、就寝中など無意識に掻いてしまうことで頭皮を傷つけ、悪化を招くことも多々あります。また、カサカサとしたフケや瘡蓋(かさぶた)などにより不衛生な印象を与えかねません。
なお、頭皮トラブルの中には乾燥だけでなく、乾癬・アトピー性皮膚炎・トンズランス感染症などの皮膚疾患もあるため、頭皮に乾燥やカサカサとしたフケ、かゆみなどの異常を感じた際は早めに皮膚科を受診することが大切です。
乾燥肌にみられるかゆみとぶつぶつ
頭皮から背中、手足など乾燥によるカサカサとかゆみは全身、どこにでも生じます。乾燥肌(皮脂欠乏症・乾皮症)が進行すると炎症や、掻破性湿疹(掻き壊しによる湿疹)となり、市販の保湿クリームなどによるセルフケアでの治療は難しいといえるでしょう。
女性の場合、ファンデーションやアイシャドウといったメイク行為が刺激となり乾燥肌の悪化を招くことも少なくありません。また、不衛生なメイク道具に繁殖した雑菌が掻き壊しの傷へ入り込み、皮膚炎を起こすケースもあるため注意が必要です。
洗顔後に肌につっぱりを感じるといった軽度の乾燥肌であれば、保湿性の高い基礎化粧品によるスキンケアでも問題ありません。しかし、カサカサして粉を吹いたように皮がむける、または赤みやかゆみを生じた際は早めに皮膚科で診察を受けましょう。
皮脂欠乏性湿疹とアトピー性皮膚炎の違いとは
皮膚が乾燥してカサカサする、かゆみ、炎症など似た症状をもつ皮脂欠乏性湿疹とアトピー性皮膚炎。どちらも皮膚のバリア機能の低下によって悪化する症状ですが、これらの皮膚疾患の原因や治療法は異なるため、自己診断によるセルフケアには注意が必要です。
皮脂欠乏性湿疹は高齢者に多く見られる皮膚疾患です。加齢による皮膚のバリア機能の低下により、皮脂と水分が失われることで、カサカサと粉を吹いたような皮剥けとかゆみが生じます。おもに腰や下肢の前面にあらわれます。
一方、アトピー性皮膚炎は幼い頃から発症しやすく、花粉やハウスダストなどによるアレルギー反応が影響するとされています。顔や首、四肢関節など特定の部位に繰り返し生じ、激しいかゆみをともなう慢性の皮膚炎です。
アトピー性皮膚炎の治療には症状により、適切な強さのステロイド外用薬や抗ヒスタミンの内服の必要があります。アトピー性皮膚炎はさまざまな要素が複雑に絡み合った症状であり、完治する治療法は見つかっていません。医学的根拠のない民間療法などはアトピー性皮膚炎の悪化を招く恐れがあるため、必ず皮膚科で診察を受けましょう。
乾燥肌と間違えやすい皮膚疾患
乾燥した踵(かかと)の皮が剥けたり、足の裏が乾いた餅のように皮膚がひび割れを起こす症状は年齢問わず多く見られます。しかし、これらの症状は角質増殖型の水虫と似ているため、セルフケアには注意が必要です。
ドラッグストアでは乾燥踵専用の保湿クリームが販売されていますが、万が一、角質増殖型の水虫であった場合、保湿クリームの水分と油分は白癬菌(水虫菌)の増殖を促してしまいます。角質増殖型の水虫はかゆみをともなわないため、その皮剥けが乾燥によるものか、白癬菌によるものかの自己診断は難しいでしょう。
水虫検査は症状のある部位の皮を採取し、顕微鏡検査によって診断されます。痛みのない検査となるのでご安心ください。
ヒロクリニック形成外科・皮膚科による乾燥肌治療
乾燥による皮膚のカサカサやかゆみは放置することで、乾燥性皮膚炎や皮脂欠乏性湿疹などへ悪化することも少なくありません。軽度かつ、一時的な肌の乾燥であれば、市販の保湿クリームなどでカサつきは治まりますが、繰り返しの乾燥や皮剥け・炎症、ぶつぶつとした湿疹が生じた際は、早めにヒロクリニック形成外科・皮膚科へご来院ください。
また、皮膚に異常は見られないものの全身がかゆいなどの症状は、肝臓病など内臓の病気が原因であることも考えられます。ヒロクリニックは総合医療クリニックであり、内科も併設され内臓と皮膚、両方の診察を行うことができます。
たかが乾燥肌と放置せず、早めの診察と適切な治療でカサカサや皮剥け、かゆみのない健やかな肌を目指しましょう。
【参考文献】