えっ、これって副乳!?妊娠や生理で気づく“もうひとつの乳腺”の話

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この記事の概要
ふと気づくと、脇の下や胸の下にぷくっとふくらみ…「これ何!?」と不安になったことはありませんか?実はそれ、「副乳(ふくにゅう)」かもしれません。誰でも持っている可能性があり、特に女性ホルモンが増える妊娠や生理の時期に気づくことが多いんです。このコラムでは、副乳ができる理由や見つかりやすい場所、治療法まで、医学的にちゃんと解説します。「気になるけど恥ずかしくて聞けない…」という疑問にやさしく答えます!

副乳とは何か

副乳(英語: accessory breast tissue、または ectopic breast tissue)は、生まれつき存在する乳腺組織の異常であり、本来の乳房とは別の場所に乳腺や乳頭が形成される状態を指します。この異常は、胎児期に発生する「乳腺堤(英語: mammary ridge または milk line)」の退縮が不完全なまま終わることで起こります。副乳はホルモンに反応しやすく、正常な乳房と同様に良性および悪性の病変が発生する可能性があります。

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胎児期の起源と発生頻度

胎児の発育過程において、人間の体には通常7〜9対の乳腺の芽が左右対称に形成されます(妊娠6週頃)。しかし、妊娠9週目になると、胸部に残る1対を除き、他はすべて消失するのが通常です。この退縮が完全に起こらず、体の他の場所に残ってしまうと副乳となります。

副乳は、脇の下(腋窩部)、胸、腹部、鼠径部(太ももの付け根)などの「ミルクライン(milk line)」上にできることが多く、顔、首、背中、手足、外陰部といったミルクラインの外にもまれに出現することがあります。

副乳の有病率は、女性で2〜6%、男性で1〜3%とされ、日本人女性では最大5%に見られるとの報告があります。人口の約10人に1人が副乳を持つと考えられています。また、家族内で見られることもあり、常染色体優性遺伝(英語: autosomal-dominant inheritance)で不完全浸透(英語: incomplete penetrance)を示すことがあります。

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副乳の分類

1915年にKajava(カヤヴァ)によって提唱された分類法が現在も臨床で用いられており、副乳の構成要素(乳腺、乳頭、乳輪)に基づいて以下の8つに分類されます。

  • 第1型:乳腺、乳頭、乳輪をすべて備えた完全な乳房
  • 第2型:乳腺と乳頭のみ
  • 第3型:乳腺と乳輪のみ
  • 第4型:乳腺のみ(最も一般的)
  • 第5型(偽乳房/pseudomamma):乳頭と乳輪のみ
  • 第6型(多乳頭/polythelia):乳頭のみ
  • 第7型(乳輪過剰/polythelia areolaris):乳輪のみ
  • 第8型(毛のみ/polythelia pilosa):毛の生えた部位のみ
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ホルモンと副乳の関係

副乳は思春期、妊娠、授乳期など、ホルモンの変動が大きい時期に目立ちやすくなります。エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの影響を受け、肥大化や圧痛(触ると痛む)を生じることがあります。とくに妊娠中や産後には、副乳が急に大きくなり、しこりや痛みとして認識されることがあります。

そのため、妊娠や出産を経験するまで副乳の存在に気づかない人も多くいます。腋の下に腫れや塊を感じたことで受診し、初めて副乳と診断されるケースも少なくありません。

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よく見られる部位と診断上の注意点

副乳は体の正中線に沿ったミルクライン上にできることが多く、特に腋窩部に集中します。腋窩部の腫れや塊は、次のような疾患と鑑別が必要です。

  • 脂肪腫(lipoma)
  • 腋窩リンパ節腫脹(lymphadenopathy)
  • 粉瘤(sebaceous cyst)
  • 化膿性汗腺炎(hidradenitis suppurativa)

診断にはまず視診と触診が行われ、必要に応じて超音波検査(ultrasound)や穿刺吸引細胞診(FNAC: Fine Needle Aspiration Cytology)が用いられます。副乳は正常な乳腺と同様の線維腺組織(fibroductal tissue)を示し、乳腺尾(axillary tail of Spence)と異なり、通常の乳房とは連続性を持ちません。

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病変のリスクと関連疾患

副乳には以下のような病変が起こる可能性があり、正常な乳房と同様に取り扱う必要があります。

  • 線維腺腫(fibroadenoma)
  • 乳腺炎(mastitis)
  • 乳汁分泌腺腫(lactating adenoma)
  • 過誤腫(hamartoma)
  • 乳腺嚢胞(breast cyst)
  • 脂肪壊死(fat necrosis)
  • 異型過形成(atypical hyperplasia)
  • 乳癌(breast carcinoma)

副乳に発生する悪性腫瘍として最も多いのは、浸潤性乳管癌(英語: infiltrating ductal carcinoma)で、症例の約79%を占めます。副乳にできた乳癌は、特に腋窩リンパ節に近接しているため、転移しやすく、診断が遅れる傾向にあります。副乳癌の罹患率は全乳癌の0.3〜0.6%とされ、まれですが臨床的には重要です。

加えて、副乳や過剰乳頭は、腎奇形(renal anomalies)といった泌尿生殖器系の異常と関連することが報告されており、報告によっては11〜27%の頻度で尿路奇形が認められます。

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外科的および非外科的治療法

無症状の場合には、経過観察のみで問題ないことが多いですが、痛み・不快感・美容的な問題・癌への不安がある場合は、外科的切除(英語: surgical excision)が選択されます。

治療法には以下があり、症状や組織の構造に応じて使い分けられます。

  • 外科的切除:乳腺組織と必要に応じて皮膚も切除
  • 脂肪吸引(英語: liposuction):特に脂肪優位の副乳に適応
  • 切除と脂肪吸引の併用

特に皮膚や乳頭・乳輪を伴う副乳の場合は、より深く切除し、皮膚の陥没を避けるよう丁寧な縫合が求められます。術後は漿液腫(seroma)や感染、皮膚の凹凸、再発のリスクがあるため、適切な術後管理が必要です。大量切除時にはドレーン(排液管)を留置することもあります。

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手術後のケアと回復過程

副乳切除後の患者は以下のような術後指導を受けます。

手術当日は患部を濡らさないよう注意し、抗生物質(3日分)と鎮痛薬(3回分)を服用します。翌日、もしくは休診日を挟んで翌々日に診察を受け、創部の状態を確認します。問題がなければ翌日からシャワー可となり、自宅での消毒とガーゼによる保護が指示されます。抜糸後には、1ヶ月ほど創部に茶色い紙テープを貼って傷痕を目立たなくするよう勧められます。炎症が残る場合には軟膏を上から塗布します。

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臨床研究と治療成績

インドで行われた臨床研究では、19〜50歳の既婚女性60人を対象に、腋窩副乳の臨床像と治療効果が検討されました。そのうち14人が両側性、46人が片側性で、授乳期に副乳が目立ってきたとの訴えが多くありました。50人が切除術を希望し、術後経過は概ね良好で、1例の漿液腫と4例の軽度感染が報告されました。病理組織学的には、切除組織から乳腺の構造が確認され、副乳であることが確定しました。

また、Aydoganらの報告では、29人中21人が切除術、5人が脂肪吸引、3人が併用治療を受け、全体的に満足度は高かったとされています。他の報告でも、乳房縮小術と同時に副乳切除を行っても合併症は増えなかったとされており、美容外科的なアプローチとしても支持されています。

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結論

副乳は比較的よく見られる先天的な異常であり、思春期や妊娠・授乳といったホルモンの影響を受けやすい時期に症状として現れることがあります。多くは良性ですが、まれに悪性化する可能性があるため、正確な診断と必要に応じた外科的治療が重要です。診断には画像検査と細胞診が有効で、症状のある例では手術による切除が安全かつ効果的な治療手段です。心理的・美容的・身体的な負担の軽減のためにも、副乳への正しい理解と適切な対応が求められます。

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