口内炎
口内炎は子供から大人まで、ほとんどの人が経験したことのある病気だと思います。
たいていの場合は誤って口の中を噛んだり、火傷(やけど)をしたせいでできますが、その他にもストレス・ビタミン不足・ホルモンの変調・胃腸障害・自律神経失調などが原因になると考えられています。
痛みが強い場合にはステロイドや消炎鎮痛剤の軟膏を塗ったりビタミン剤を内服して治療しますが、もし治療を行わなくても数日以内に気にならなくなり、いつの間にか治っているような軽症が多いです。
そのため、口内炎ができても病院を受診しようと思うことはあまりないと思います。
しかし中には、再発しやすい口内炎・治りにくい口内炎・症状の強い口内炎(痛みが強い・範囲が広いなど)も存在します。
その原因は感染症・薬・アレルギー・水疱症などの自己免疫疾患・癌・その他など様々です。
考えられる原因・疾患は下記のとおりです。
再発性アフタ
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、粘膜にできる円形か楕円形の小さな潰瘍のことをアフタ(アフタ性潰瘍)と呼びます。
簡単にいえば口内炎のことです。
再発性アフタとは、直径3〜5mmくらいの口内炎が繰り返してできる状態です。
通常の口内炎と同様に、ストレス・ビタミン不足・ホルモンの変調・胃腸障害・自律神経失調・喫煙・生活習慣の乱れなどが原因になっている可能性があると言われています。
治ってもまた口内炎を繰り返すという経過から診断は比較的簡単ですが、根本的な原因をしっかり取り除かないと解決しにくい疾患です。
感染症によってできる口内炎
ウイルスや真菌(カビ)が口の粘膜に感染することによって口内炎ができる場合もあります。
代表的な疾患としては、口腔カンジダ・手足口病・ヘルペスウイルスによる口内炎があります。
口腔カンジダ
カンジダ・アルビカンスという真菌によって頬の粘膜・舌・歯肉・硬口蓋(こうこうがい:口の中の上側)などに白い苔(こけ)のようなものがついたり、潰瘍ができる病気です。
出産時に母親から感染した新生児や、免疫力の落ちた高齢者に発症することが多いです。
健康な成人の場合でも口腔内にはカンジダが常在していますが、通常であれば免疫が働くため感染して症状が出ることはありません。
成人で口腔カンジダを発症した場合には、糖尿病や免疫不全などの基礎疾患が隠れている可能性もあるため注意が必要です。
また、他の病気に対して抗菌薬を長期的に使用していると、細菌が減ることによって口腔内常在菌のバランスが崩れて口腔カンジダを発症することもあります。(これを菌交代現象といいます)
手足口病
手足口病はエンテロウイルスやコクサッキーウイルスの感染症です。
痛みを伴う口内炎や手足に特徴的な発疹が出やすいことから、手足口病という変わった名前がつけられています。
夏頃に保育園や小学校で流行りやすい病気としても有名ですが、大人にも感染します。
大人が感染した場合には症状が強いことが多いです。
流行状況や発疹の分布などから診断はそこまで難しくありませんが、口内炎は多発したり食事をとれなくなるほど痛みやすく、非常につらいことがある病気です。
ヘルペス性歯肉口内炎・口唇ヘルペス
どちらも単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の感染症です。
初めてHSV-1に感染した時には、ヘルペス性歯肉口内炎の症状(高熱・口腔粘膜に痛みを伴う水疱やびらん・歯肉炎・リンパ節腫脹)が生じることがあります。
高熱ももちろんつらいのですが、口腔内の症状、特に痛みの強い口内炎や歯肉からの出血が特徴的です。
また一度HSV-1に感染したことがある人の中には、時々ウイルスが再活性化することによって口唇ヘルペスを発症する人がいます。口唇ヘルペスでは高熱などの全身症状を起こすことはほとんどありませんが、数ヶ月〜数年にわたり繰り返して発症します。
唇に水疱ができる症状が有名ですが、口の粘膜に水疱を作って口内炎になることもあります。
薬によってできる口内炎
少し意外に感じるかもしれませんが、薬によって口内炎ができることもあります。
以下で説明する固定薬疹(こていやくしん)や扁平苔癬(へんぺいたいせん)は薬によって再発しやすいあるいは治りにくい口内炎ができる病気の代表です。
どちらもあまり有名な病気ではないため、皮膚科以外の医師には知られていないこともあります。
固定薬疹
固定薬疹は、特殊な薬剤アレルギーの一種です。
特定の薬剤を使用した後に毎回、同じ部位に同じ症状(皮疹や水疱)を繰り返すのが特徴です。
口の周りや外陰部など、皮膚と粘膜が移行する部分に症状が出やすく、口腔内に水疱ができるタイプの場合には口内炎と勘違いされることがあります。
- 「風邪をひくと毎回口内炎ができやすくなる」と思っていたら、実は風邪の時に毎回内服していた総合感冒薬による固定薬疹だった。
- 「生理のたびに口内炎ができるので、ホルモンバランスのせいだ」と思っていたら、生理痛に対して内服していた鎮痛薬による固定薬疹だった。
このようなケースもありますので、思い当たる節がある方は一度皮膚科へ相談してください。
なお固定薬疹を疑って受診される際は、常用薬(毎日飲むお薬)や頓服薬(発作や症状が出た時にのむお薬)の現物をお持ちいただくとスムーズに診察を行える場合があります。
扁平苔癬
内服薬の他にも金属アレルギー・C型肝炎・ストレス・機械的刺激などによって、口内炎のような症状がでることのある病気です。
皮膚に発疹のような症状が出るタイプの扁平苔癬もあります。
扁平苔癬による口内炎は唇や頬の粘膜にできやすく、不規則な形をしていることが多いです。
男女差なく、成人に好発し、慢性に経過します。
疑わしい原因がある場合には取り除いた上で、ステロイドやタクロリムスなどの軟膏を用いて治療します。
しかし薬が原因の場合にはその薬をやめた後も症状が続いてしまうことが多いです。
尋常性天疱瘡/粘膜類天疱瘡
天疱瘡(てんぽうそう)や類天疱瘡(るいてんぽうそう)とは、免疫系の異常によって免疫細胞が皮膚の細胞同士のつながりを破壊してしまい、粘膜や全身の皮膚に水疱ができる病気です。
それぞれに細かい分類がありますが、尋常性(じんじょうせい)天疱瘡や粘膜(ねんまく)類天疱瘡は口の中に水疱を作ることがあるタイプの水疱症です。
稀な病気ではありますが、てっきりただの口内炎だと思っていたら、実は水疱症だったということもありえなくはありません。
口内炎のようにみえる癌
治りにくい口内炎だと思っていたら実は癌だった、ということも。
小さな口内炎だけならあまり心配ないですが、いつもの口内炎より大きい場合や傷が深い場合、口内炎の周囲が硬くしこりのように触れる場合、口内炎からの出血が続く場合などは注意が必要です。
口の中は自分で見づらく、セルフチェックが困難なことも多いと思います。
その他の口内炎(ベーチェット病)
口腔内アフタ・眼の症状(視力低下など)・皮膚の症状(結節性紅斑・毛包炎)・陰部潰瘍の4つを主な症状とする難治性の病気です。
口内炎ができ始めてから、遅れて他の症状が出現してくることがあると言われています。
口内炎ができたからといってすぐに疑う病気ではありませんが、上記の症状が口内炎に続いて出てきて治らない場合には早めに病院を受診したほうが良いでしょう。
治りにくい口内炎ができた時は、皮膚科を受診しましょう
このように、口内炎が治りにくい場合は少し特殊な病気が潜んでいる可能性も否定できません。
たかが口内炎と油断しないほうがいい場合もあるのです。
口内炎で困っている場合は是非一度、当院を受診してみてください。
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