もしかして巻き爪?足元の痛みの正体とやさしい治し方ガイド

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最近、足の親指がなんだか痛い…そんなあなた、それは“巻き爪”かもしれません。巻き爪は見た目以上に痛く、放っておくと歩くのもつらくなることも。本記事では、なぜ巻き爪になるのか、どんな治療法があるのかをやさしく解説します。普段のセルフケアでできることから、専門の治療まで、はじめてでも分かるよう丁寧に紹介しています。将来の自分のためにも、早めの対処を学んでおきましょう!

巻き爪(陥入爪)の理解:原因、診断、疫学

巻き爪とは何か?

巻き爪(英:onychocryptosis または unguis incarnatus)とは、足の爪の端が周囲の皮膚(爪周囲皮膚:periungual tissue)に食い込むことで発生する疾患です。この状態は局所的な炎症を引き起こし、二次感染を伴うこともあります。もっともよく見られる部位は足の親指(母趾:great toe, hallux)であり、プライマリ・ケアの現場では足に関する受診理由の約20%を巻き爪が占めています。

どのような人がかかりやすく、どれくらい多いのか?

疫学的な調査によると、巻き爪の有病率は約2.5〜5%と推定されています。主に思春期から若年成人の男性に多く発症し、男女比は約2:1です。近年では、身体活動の増加や巻き爪に対する認知の向上によって発症件数が増加している可能性があります。

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巻き爪の原因

巻き爪はさまざまな内的・外的要因によって発生します。 爪の切り方が誤っている(特に爪の端を丸く切る習慣)、きつい靴の着用、ランニングやボールを蹴る動作などによる繰り返しの外的圧力、過剰な発汗(多汗症:hyperhidrosis)、足の衛生状態が不良であること、爪白癬(onychomycosis:真菌による爪の感染)、上皮成長因子受容体阻害薬(epidermal growth factor receptor inhibitors:例としてゲフィチニブ gefitinib、セツキシマブ cetuximab)の使用などが含まれます。

また、先天的または解剖学的な異常(例:ピンサー・ネイル、爪の幅が広い、爪が厚い)もリスク因子とされています。一部の研究では、爪の側面の軟部組織の過形成が原因とする説もありますが、現在では爪甲(nail plate)が爪囲の皮膚に直接侵入して炎症や肉芽組織(granulation tissue)を形成するという仮説がより広く受け入れられています。

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巻き爪の進行と診断

巻き爪の進行段階

巻き爪は以下の3段階を経て進行するのが一般的です。 第1段階では、軽度の発赤、疼痛、腫脹が見られ、炎症の初期徴候を示します。第2段階では、漿液膿性の分泌液(seropurulent fluid)や潰瘍形成を伴う感染が明らかになります。第3段階になると、慢性化した炎症とともに肉芽組織が増殖し、疼痛や分泌液が悪化します。

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医師による診断方法

診断は通常、視診と問診による臨床的判断で可能です。ただし、爪下に硬いしこりが触知される場合には、爪下外骨腫(subungual exostosis)や悪性腫瘍(例:爪下黒色腫 subungual melanoma、扁平上皮癌 squamous cell carcinoma)などを除外するためにX線撮影が推奨されます。

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手術を伴わない巻き爪の治療法

保存的治療が適応となるのはどんな場合か?

軽度から中等度(第1~2段階)の巻き爪では、非手術的な保存療法が有効です。特に妊娠中、出血性疾患、局所麻酔薬アレルギーなど手術が難しい患者にとって、保存的治療は第一選択となります。

保存療法の種類と実施方法

足や爪の正しい手入れが重要で、爪の角を丸く切らないこと、幅広の靴を履くことが推奨されます。足を温水またはエプソム塩(Epsom salt)で浸すことにより炎症を緩和でき、肉芽組織がある場合は局所用ステロイド外用薬(topical corticosteroids)が効果的です。

さらに、以下のような機械的手法も有用です。 コットンウィック法やデンタルフロス法では、爪の端の下に詰め物を入れて持ち上げる方法が取られます。ガタースプリント法(gutter splint)は、スリットを入れたビニールチューブや点滴チューブを爪と皮膚の間に挿入して固定する方法です。綿キャスト法(cotton nail cast)は、U字型に成形したコットンを接着剤(シアノアクリレート glue)で固定します。

また、炎症を起こしている皮膚をテープで爪から引き離すテーピング法や、弾性ワイヤーやプラスチック器具を用いた矯正(オルトニキシア:orthonyxia)などもあります。これらはすべて、爪の形状を改善し圧力を減らすことで症状を和らげ、正常な成長を促すことを目的としています。

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重度・再発例に対する外科的治療

手術が必要となるケース

第3段階まで進行した場合、あるいは保存療法に反応しない症例では手術が適応されます。持続的な感染、肉芽組織の過剰増殖、爪囲の肥厚(hypertrophy)などがある場合、外科的介入が最も効果的とされます。

使用される麻酔の種類

手術は通常、局所麻酔で行われ、デジタルブロック(digital block)、中足骨ブロック(metatarsal block)、または経腱鞘ブロック(transthecal block)が用いられます。麻酔薬としてはリドカイン(lidocaine)やロピバカイン(ropivacaine)が使用されます。

代表的な手術法

Ross法は爪の一部(側縁)を除去する部分的な抜爪(nail avulsion)で、必要に応じて爪母(nail matrix)を除去します。Winograd法では、くさび形の組織を切除し爪母も同時に処理します。Zadik法は爪と爪母を完全に取り除く方法で、変形が著しい例に適応されます。Vandenbos法は、爪そのものではなく過剰な皮膚を広範囲に切除します。回転皮弁法(rotational flap)は複雑例に用いられますが、再発率が高いとされています。

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爪母破壊術(マトリセクトミー:matrixectomy)の手法

マトリセクトミーには以下の手法があります。 フェノール(phenol:80〜88%)による化学的破壊は再発率が5%未満と低く、出血も少ないため、糖尿病患者や抗凝固薬を使用中の患者に適しています。ただし妊娠中は使用を避けるべきで、過剰使用すると分泌液が長引く可能性があります。 水酸化ナトリウム(sodium hydroxide:10%)やトリクロロ酢酸(trichloroacetic acid:80%)も有効で、ある研究では197例中94%の成功率が報告されています。 電気外科手術(electrosurgery)では特殊な電極を使って爪母を精密に破壊でき、術後の分泌液も少ない傾向にあります。レーザー焼灼術(laser ablation)も効果的ですが、コストの問題で一般的ではありません。

各手術法の比較

Cochraneレビューによると、くさび形切除や皮膚の広範囲切除は回転皮弁法に比べて再発率が大幅に低く(リスク比:0.19および0.17)、部分抜爪+フェノールによるマトリセクトミーは全抜爪よりも機能的かつ審美的な面で優れていると評価されています。

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手術後の経過と管理

術後ケアの基本

術後は患部を12〜24時間ほど挙上し、鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)を使用することで痛みを管理できます。包帯は24〜48時間以内に交換し、多くの患者は早期に通常歩行に戻ることが可能です。爪床からの分泌液は2〜3週間続くことがあります。

抗菌薬の使用と合併症の予防

抗菌薬は通常必要ありませんが、蜂窩織炎(cellulitis)がある場合には処方されます。過度なマトリセクトミーにより、爪の変形、治癒遅延、深部組織損傷、肉芽腫(granuloma)形成などの合併症が生じることがあります。

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最新の研究結果(Exley ら、2023年)

研究の概要

2023年、Exleyらの研究チームは、14か国から集めた36件の無作為化比較試験(randomized controlled trials: RCT)に基づく系統的レビューとメタアナリシスを実施しました。対象は3,756人で、巻き爪に対する手術法の再発率と症状緩和効果を評価しました。

主な研究結果

フェノールを用いたマトリセクトミーは、抜爪単独と比較して再発率が87%低下(リスク比 = 0.13)することが明らかになりました。ただし、証拠の質は非常に低いと評価されています。

その他の手術法同士の比較では、症状改善や再発予防の明確な優位性は見られませんでした。 フェノールの塗布時間は60秒が最も効果的で、30秒では効果が劣り、2〜3分に延長しても追加の利益は確認されませんでした。 麻酔薬へのアドレナリン追加や術後抗生物質の投与は再発防止に有意な影響を与えませんでした。 症状緩和に関する報告は不十分で、全体のうち5件の研究しか評価を行っておらず、明確な定義や患者の主観的な評価も欠如していました。

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総括

フェノールによるマトリセクトミーは広く用いられており、再発防止に有効であるとされます。ただし、本分野の研究の質には限界があり、標準化された評価基準や患者中心のアウトカム指標の整備が求められています。

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チーム医療と患者教育の重要性

巻き爪の管理には、家庭医、足病医(podiatrist)、皮膚科医、看護師、創傷ケア専門家など多職種による協働が必要です。看護師は、正しい爪の切り方の指導や術後フォロー、再発防止策の教育において中心的な役割を果たします。治療の選択は、病態の重症度に加え、患者の希望、医師の経験、基礎疾患の有無などを総合的に考慮して決定されるべきです。

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引用文献

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