EpCAM（Epithelial Cell Adhesion Molecule）は、上皮細胞接着分子としても知られ、主に上皮組織に豊富に発現している膜タンパク質です。EpCAMは細胞間の接着を調節し、細胞の増殖や分化、移動に影響を与えることが知られています。このタンパク質は、がんの診断と治療のターゲットとしても重要な役割を担っています。
機能と役割
- 細胞接着: EpCAMは元々細胞接着を促進するタンパク質として同定されましたが、その機能は複雑で、細胞接着を弱めることによって細胞移動を促進する役割も担っています。
- 細胞シグナル伝達: EpCAMは細胞増殖に必要なシグナル伝達経路に関与しており、特に上皮発がん過程で重要です。
- 幹細胞維持: 特定の細胞集団において、EpCAMは幹細胞の維持と自己複製能力の調節に関与しています。
臨床的意義
- がんバイオマーカー: EpCAMは多くの上皮性がん（乳がん、前立腺がん、大腸がんなど）で過剰発現しており、腫瘍細胞の識別と分離に利用されます。このため、EpCAMはがん診断と治療のバイオマーカーとして広く研究されています。
- がん治療の標的: EpCAMの過剰発現を標的とする治療戦略が開発されており、特にモノクローナル抗体やCAR-T細胞療法などの免疫療法が注目されています。
- 循環腫瘍細胞（CTC）の検出: EpCAMを用いた検出技術により、がん患者の血液中から循環腫瘍細胞を分離・同定することが可能です。これにより、がんの早期発見、治療の効果評価、再発のモニタリングが行えます。
EpCAMの研究と応用は、がん生物学と臨床治療の領域で重要な進歩をもたらしており、新たな治療法の開発に貢献しています。
