EpCAMとCTCの関係
EpCAM(Epithelial Cell Adhesion Molecule)は、上皮細胞の表面に発現するタンパク質であり、CTC(循環腫瘍細胞)の検出において重要なバイオマーカーとして広く利用されています。以下に、EpCAMとCTCの関係について詳しく説明します。
1. EpCAMの役割
EpCAMの機能:
- 細胞接着: EpCAMは細胞接着分子として機能し、細胞間の接着を促進します。
- シグナル伝達: 細胞増殖や分化、移動に関与するシグナル伝達経路に影響を与えます。
がん細胞での発現:
- EpCAMは多くの上皮系がん(乳がん、大腸がん、前立腺がんなど)の細胞表面に高発現していることが知られています。このため、EpCAMはがん細胞を特異的に標的とするバイオマーカーとして利用されます。
2. CTC検出におけるEpCAMの利用
CTCの検出方法:
- 免疫マグネティック分離: EpCAMに対する抗体をマグネティックビーズに結合させ、血液サンプル中のEpCAM陽性CTCを磁場を用いて分離する方法です。この方法は高い特異性と効率を持ち、FDA承認のCellSearchシステムなどで使用されています 。
利点:
- 高特異性: EpCAMは多くの上皮系がん細胞に高発現しているため、がん細胞を特異的に検出することが可能です。
- 確立された技術: EpCAMを利用したCTC検出技術は商用システムとして広く利用されており、その有効性と信頼性が証明されています 。
欠点:
- 発現の異質性: 一部のがん細胞や上皮間葉転換(EMT)を起こしたがん細胞ではEpCAMの発現が低下しているため、これらのCTCを検出するのが難しい場合があります 。
- マーカー依存性: EpCAMに依存するため、EpCAM陰性のがん細胞は見逃される可能性があります。
3. EpCAMを補完するアプローチ
多重マーカーアプローチ:
- EpCAMと他の表面マーカー(例:CK(サイトケラチン)、Vimentinなど)を組み合わせて使用することで、より広範なCTCの検出が可能となります。この方法により、EMTを起こしたCTCやEpCAM陰性CTCも効率的に検出できます 。
遺伝子解析:
- EpCAMによる物理的分離後に、CTCの遺伝子解析を行うことで、より詳細ながん特性の理解と個別化医療への応用が可能になります 。
まとめ
EpCAMは、CTC検出において非常に有効なバイオマーカーであり、特に上皮系がんの診断や治療モニタリングにおいて重要な役割を果たしています。しかし、EpCAMの発現に依存するため、発現の低いCTCの検出には限界があるため、多重マーカーアプローチや遺伝子解析との併用が推奨されます。