ctDNAと炎症疾患の関係
ctDNA(循環腫瘍DNA)は、がん診断やモニタリングに広く利用されていますが、近年では炎症疾患との関係性も研究されています。ctDNAは、がん以外の疾患、特に炎症性疾患においても重要な情報を提供する可能性があります。
ctDNAと炎症疾患の関係性
- 細胞死とDNA放出:
- 炎症疾患において、組織損傷や細胞死(アポトーシス、ネクローシス)が増加し、これに伴いcfDNA(循環細胞フリーDNA)が血液中に放出されます。このcfDNAには、炎症部位から放出されたDNAも含まれます。
- 炎症マーカーとしての役割:
- ctDNAは、炎症疾患の進行度や重症度を反映する可能性があります。例えば、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)では、ctDNAのレベルが疾患活動性と相関することが報告されています。
- メチル化パターンの解析:
- 炎症疾患に関連する遺伝子のメチル化パターンを解析することで、特定の疾患に関連するctDNAの検出が可能になります。これにより、炎症疾患の診断やモニタリングが可能となります。
- 感染症との関連:
- 感染症による炎症反応においてもctDNAが増加することがあります。例えば、敗血症患者の血液中には高レベルのcfDNAが検出され、病状の重篤度と相関することが示されています。
臨床応用と研究の進展
- 診断とモニタリング:
- 炎症性疾患の診断や病状モニタリングにおいて、ctDNAの測定が役立つ可能性があります。これにより、非侵襲的に疾患の進行状況を評価し、治療効果をリアルタイムで追跡することができます。
- 治療効果の評価:
- 炎症性疾患の治療中にctDNAのレベルをモニタリングすることで、治療の効果を評価し、必要に応じて治療計画を調整することが可能です。
- 予後予測:
- 高レベルのctDNAは、炎症疾患の予後不良を示唆する可能性があります。これにより、患者のリスク評価と個別化医療の実現が期待されます。
ctDNAは、がん以外にも炎症疾患の診断やモニタリングにおいて重要な役割を果たす可能性があり、今後の研究と臨床応用の拡大が期待されています。