がんゲノム検査が保険適応になるためには

がんゲノム検査は、がん患者に対して、がん細胞の遺伝子変異を解析し、適切な治療法を見つけるために行われる検査です。この検査によって、個々の患者に最も効果が期待できる治療薬の選択や、標的治療の可能性が見出される場合があります。

日本では、がんゲノム検査の一部が公的医療保険の適用対象となっており、条件を満たした患者は保険適用で検査を受けることができます。

具体的には、以下の条件が保険適用の目安となっています:

  1. 標準治療がない場合:既存の治療法で効果が期待できない場合や、標準治療が終了している場合。
  2. 固形がんに対する治療であること:固形がん(例:乳がん、肺がん、大腸がんなど)における検査が主な対象です。
  3. 指定された医療機関で実施されること:がんゲノム検査は、保険適用が可能な指定医療機関で実施されることが求められます。

ただし、がんゲノム検査はまだ発展中の医療技術であるため、検査結果に基づいた治療が必ずしも効果を発揮するとは限りません。また、保険適用されるのは、条件に合致した患者に対してのみであり、がんの種類や患者の状態によって異なります。

がんゲノム検査が行われるのは、特に標準的な治療が効果を示さない場合や、治療法が限られている進行がんのケースが多いです。具体的には、以下のようながんにおいて、がんゲノム検査が活用されることがありますが、必ずしも治療効果が確実ではありません。

1. 肺がん

非小細胞肺がんなどでがんゲノム検査が行われることが多いです。EGFR、ALK、ROS1などの遺伝子変異がターゲット治療薬の標的となる場合がありますが、全ての肺がんで有効な治療法が見つかるわけではありません。

2. 大腸がん

大腸がんでは、RAS、BRAFなどの遺伝子変異が治療に関連しています。遺伝子変異によっては特定の抗がん剤や免疫療法が効果を示す場合もありますが、全ての患者に治療が有効とは限りません。

3. 乳がん

乳がんにはHER2陽性やBRCA1/2変異などが関連しています。HER2陽性乳がんの場合は特定の分子標的治療が有効なことが多いですが、BRCA変異による治療の選択肢が必ず効果を示すわけではなく、がんの進行度や個々の遺伝子変異によって治療効果が異なります。

4. 胃がん

胃がんの場合、HER2やMSI(マイクロサテライト不安定性)などの特徴があると、特定の薬が効果的なことがありますが、その他の遺伝子変異については治療の予測が難しい場合が多いです。

5. 卵巣がん

BRCA1/2変異を持つ卵巣がんに対してはPARP阻害剤が有効である場合があるため、がんゲノム検査が行われることがあります。しかし、BRCA変異が見つからない場合には治療の選択肢が限られる場合があります。

6. 膵がん

膵がんは非常に治療が難しく、標準的な治療の効果が限られるため、がんゲノム検査で特定の変異を調べ、少しでも有効な治療法を探ることがありますが、治療の可能性が必ずしも高くはありません。

7. 肉腫(サルコーマ)

さまざまな種類の肉腫で、がんゲノム検査が行われますが、特に治療が難しいため、見つかった変異が治療に結びつくケースは限られています。


これらのがんで、がんゲノム検査によって治療法が見つかる可能性がある一方、見つかる確率はケースによって異なり、実際に治療が有効かどうかは予測できない場合もあります。

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