舌がんに対する先進医療

がんに対する先進医療では、従来の手術や放射線療法、化学療法に加え、最新の技術や治療法が導入され、治療効果の向上と副作用の軽減が目指されています。特に、舌の機能(言語・嚥下機能)を可能な限り維持することが重視されており、個別化された治療が進展しています。以下では、舌がんに対する主な先進医療の技術やアプローチを紹介します。

1. ロボット支援手術(ダビンチ手術)

  • 概要: ロボット支援手術は、ダビンチシステムを使った低侵襲手術で、舌がんに対しても適用されます。手術支援ロボットによる精密な操作により、腫瘍を周囲の組織や神経を保護しながら切除することが可能です。
  • 利点: 傷口が小さく、出血が少なく、術後の回復が早いです。また、舌の機能を温存しやすく、言語や嚥下機能の保護が期待されます。

2. 経口内視鏡手術(TOS)

  • 概要: 経口内視鏡手術は、口腔内から内視鏡を挿入して腫瘍を切除する低侵襲手術です。顔や首に傷が残らないため、美容的にもメリットがあり、舌の一部を切除する場合にも使用されます。
  • 利点: 外部切開を伴わないため、術後の回復が早く、痛みや感染リスクが低減されます。また、顔や首に傷が残らず、機能や外見に配慮した治療が可能です。

3. 強度変調放射線治療(IMRT)

  • 概要: IMRTは、腫瘍に対して放射線を集中的に照射することで、正常な組織への影響を最小限に抑える放射線治療法です。舌がんにおいても、腫瘍に対して高精度に照射でき、口腔内の他の組織へのダメージを軽減します。
  • 利点: 正確に放射線を集中させることができるため、治療効果が高まり、副作用が軽減されます。特に、進行した舌がんや再発がんに対して有効です。

4. 陽子線治療

  • 概要: 陽子線治療は、陽子を使ってがん細胞に放射線を集中させる治療法で、正常な組織へのダメージを最小限に抑えながら腫瘍に対して高エネルギーを照射できます。
  • 利点: 放射線が正確にがん細胞に届くため、正常な組織を保護しながら腫瘍を攻撃でき、特に再発がんや手術が難しいケースに有効です。

5. 重粒子線治療

  • 概要: 重粒子線治療は、炭素イオンを使用した放射線治療法で、従来の放射線治療よりも高エネルギーを持ち、がん細胞を強力に破壊します。舌がんの治療においても使用され、進行がんや再発がんに対して高い効果を示します。
  • 利点: 正常な組織を保護しつつ、がん細胞に対して効果的に治療でき、特に手術が難しい場合に有効です。副作用が少なく、治療後の生活の質を保つことができます。

6. 分子標的療法

  • 概要: 分子標的療法は、がん細胞の特定の分子や遺伝子を標的にして、がんの成長や拡散を抑える治療法です。舌がんに対しても、EGFRを標的とした治療薬(セツキシマブなど)が使用されます。
  • 利点: 正常な細胞への影響を最小限に抑えつつ、がん細胞に対して選択的に働くため、効果が高く副作用が少ないです。進行がんや再発がんに対しても使用されます。

7. 免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬)

  • 概要: 免疫療法は、患者の免疫系を強化してがん細胞を攻撃する治療法です。免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブやニボルマブなど)は、がん細胞が免疫系から逃れるのを防ぎ、免疫細胞ががんを攻撃できるようにします。
  • 利点: 進行がんや化学療法が効かない再発がんに対しても有効で、副作用が少なく、長期的な治療効果が期待されます。

8. がんゲノム医療

  • 概要: がんゲノム医療は、がん細胞の遺伝子プロファイルを解析し、個々の患者に最適な治療法を提供するアプローチです。舌がんにおいても、遺伝子情報に基づいて最適な分子標的薬や免疫療法が選択されます。
  • 利点: 遺伝子変異に基づいた個別化医療が可能で、より効果的な治療を受けられる可能性が高まります。副作用が少なく、治療の効果が向上することが期待されます。

9. 高強度焦点式超音波治療(HIFU)

  • 概要: HIFUは、高強度の超音波を腫瘍に集中して照射し、がん細胞を加熱して破壊する非侵襲的な治療法です。舌がんの局所治療としても適用されることがあります。
  • 利点: 非侵襲的で、体への負担が少ない治療法であり、手術が難しい患者や再発がんに対しても有効です。周囲の正常組織を保護しながら、腫瘍を効率的に破壊することができます。

10. ナノナイフ(不可逆的電気穿孔法, IRE)

  • 概要: ナノナイフは、がん細胞に電気パルスを送り、細胞膜を破壊してがん細胞を死滅させる治療法です。特に、血管や神経に近接する腫瘍に対して適用され、周囲の重要な組織を傷つけることなくがんを治療します。
  • 利点: 非侵襲的であり、正常組織に対するダメージが少なく、手術が難しい部位の腫瘍にも適用可能です。治療後の回復が早く、患者への負担が少ない治療法です。

まとめ

がんに対する先進医療では、ロボット支援手術や分子標的療法、免疫療法、放射線療法の進化など、多様な選択肢が提供されています。これにより、患者の状態に応じた最適な治療が可能となり、治療効果の向上や副作用の軽減が期待されています。特に、がんゲノム医療や免疫療法の進展により、進行がんや再発がんに対しても新しい治療選択肢が提供されるようになっています。

専門医と十分に相談し、最適な治療法を選択することが、舌がん治療の成功につながります。

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