ER(エストロゲン受容体)

ER(エストロゲン受容体)は、ホルモン受容体の一種で、主に細胞の核内に存在し、エストロゲンと結合することで細胞の遺伝子発現を調節します。この受容体は、特に乳腺組織を含む多くの組織で重要な役割を果たし、性差特異的な発達、生殖、および全体的な健康に関わっています。エストロゲン受容体には二つの主要な形式、ERα(アルファ)とERβ(ベータ)があり、それぞれ異なる組織特異性と機能を持っています。

機能と役割

  1. 遺伝子調節: ERはエストロゲンと結合すると活性化され、DNAの特定の応答要素に結合して、ターゲット遺伝子の転写を促進または抑制します。これにより、細胞の成長、分化、代謝が調節されます。
  2. 細胞増殖と分化: ERは乳腺、子宮、骨などの組織における細胞の増殖と分化に深く関与しています。特に乳腺組織における乳腺発達や維持に重要な役割を果たします。
  3. 代謝調節: エストロゲン受容体は、脂質代謝や骨の代謝を含むさまざまな生理的プロセスに影響を与えます。

臨床的意義

  • 乳がん: ERは乳がんの発生と進行において中心的な役割を果たします。特にER陽性の乳がんは、エストロゲン依存型であり、抗エストロゲン療法(例:タモキシフェン)による治療が有効です。
  • ホルモン療法: ER陽性のがんに対して、エストロゲンの作用をブロックするホルモン療法が広く用いられています。この治療は、がん細胞の成長を抑えることを目的としています。
  • 骨粗しょう症: エストロゲン受容体は骨密度の維持にも関与しているため、骨粗しょう症の治療において、エストロゲン様の効果を持つ薬剤が利用されることがあります。

ERの研究は、エストロゲン関連疾患の理解を深め、これらの状態の治療に新たな洞察を提供する可能性を持っています。特に乳がん治療において、ERステータスは治療選択と予後判断の重要な要素です。

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