この治療法は「ソノダイナミック療法(SDT)」として知られ、特定の化学物質(感受性物質)と超音波を使用してがん細胞をターゲットにする新しい形式のがん治療です。SDTは光動力療法(PDT)に似ていますが、光ではなく超音波を使用する点が異なります。
ソノダイナミック療法(SDT)の原理
- 感受性物質の投与: 治療ではまず、ソノセンサーと呼ばれる特殊な感受性物質を患者に投与します。これらの物質は通常、非毒性であり、特に超音波のエネルギーに反応して活性化される性質を持っています。
- 超音波の照射: 感受性物質が腫瘍組織に取り込まれた後、対象の腫瘍部位に超音波を照射します。超音波は深部組織に到達する能力があり、照射されると感受性物質が活性化されます。
- 光化学反応の誘発: 活性化された感受性物質は光化学反応を引き起こし、この過程で大量の活性酸素種(ROS)が生成されます。活性酸素種は強力な酸化剤であり、がん細胞の膜、タンパク質、DNAを損傷し、最終的に細胞死を引き起こします。
- 腫瘍組織の変性壊死: 生成された活性酸素種により、がん細胞は酸化ストレスにより壊死します。この過程では正常細胞への影響が最小限に抑えられるため、周囲の健康な組織へのダメージが少ないのが特徴です。
SDTの利点と課題
- 利点: 深部の腫瘍に対しても効果的に治療が可能であり、正常組織への影響が少ないため、副作用が少ない。また、超音波は非侵襲的であり、治療が比較的簡単であることも利点です。
- 課題: 感受性物質の種類、超音波の正確な照射条件(周波数、強度、時間)など、最適な治療条件を見つける必要があります。また、全てのがん種やすべての患者に効果的であるわけではなく、個々のケースに応じた治療計画が必要です。
SDTはまだ研究段階の治療法の一つであり、臨床試験を通じてその安全性と効果がさらに検証されています。がん治療の選択肢としての可能性を探るためには、引き続き研究と開発が必要です。