がんスクリーニング検査の有効性

各種がんのスクリーニング検査の有効性を評価するために、感度(sensitivity)と特異度(specificity)という概念が使われます。感度は、検査が病気を持つ人を正確に検出する能力を示し、特異度は、病気がない人を正確に「正常」と判定する能力を示します。高い感度は偽陰性を減らし、高い特異度は偽陽性を減らすことが重要です。

以下は、主要ながんのスクリーニング検査における一般的な感度特異度についての目安です。

1. 肺がん

  • 低線量CT(LDCT)
  • 感度: 80〜93%
  • 特異度: 73〜85%
  • 有効性: 肺がんの早期発見に非常に効果的であり、特に高リスク群(喫煙者)で死亡率の低減が確認されています。しかし、特異度がやや低いため、偽陽性のリスクがあります。

2. 乳がん

  • マンモグラフィー
  • 感度: 77〜95%(年齢や乳腺密度により変動)
  • 特異度: 94〜97%
  • 有効性: 乳がんの早期発見に効果的で、死亡率を大幅に減少させることが示されています。乳腺密度が高い若い女性では感度が低くなることがあります。
  • 乳房超音波(エコー)検査
  • 感度: 60〜95%
  • 特異度: 80〜94%
  • 有効性: マンモグラフィーと組み合わせることで、特に若い女性や乳腺が密な人に対して有効です。単独では偽陽性が出やすい傾向があります。

3. 子宮頸がん

  • パップテスト(子宮頸部細胞診)
  • 感度: 55〜80%
  • 特異度: 95〜98%
  • 有効性: 特異度が高く、異常細胞や前がん状態を検出するのに有効ですが、感度が低いため、がんを見逃すリスクがあります。定期的な検査でリスクを低減できます。
  • HPV検査
  • 感度: 86〜97%
  • 特異度: 85〜90%
  • 有効性: 感度が非常に高く、特にHPV関連のがんの早期発見に有効です。HPV検査は、パップテストと併用されることが推奨されます。

4. 大腸がん

  • 便潜血検査(FOBT)
  • 感度: 50〜80%
  • 特異度: 90〜95%
  • 有効性: 簡便で安価なスクリーニング検査であり、広く使われていますが、感度が低く、早期がんや小さなポリープは見逃すことがあります。
  • 大腸内視鏡検査
  • 感度: 95〜100%
  • 特異度: 100%
  • 有効性: 最も信頼性の高い大腸がん検査で、感度・特異度が非常に高く、大腸ポリープやがんを早期に発見できるため、死亡率の低減に寄与します。

5. 前立腺がん

  • PSA検査(前立腺特異抗原検査)
  • 感度: 20〜40%
  • 特異度: 85〜95%
  • 有効性: PSA検査は、前立腺がんのスクリーニングとして使用されますが、感度が低く、前立腺肥大などが原因で偽陽性が出ることがあります。過剰診断のリスクもあるため、医師と相談しながら検査の適応を判断する必要があります。

6. 肝臓がん

  • 腹部超音波検査
  • 感度: 60〜80%
  • 特異度: 85〜94%
  • 有効性: 肝硬変やB型・C型肝炎の患者に対して、肝臓がんの早期発見に有効です。超音波検査は定期的に行うことで、がんを早期に発見する可能性が高まります。
  • AFP検査(αフェトプロテイン検査)
  • 感度: 41〜65%
  • 特異度: 80〜94%
  • 有効性: AFP検査は肝臓がんに関連する血液検査ですが、感度がそれほど高くないため、腹部超音波と組み合わせて使われることが多いです。

7. 胃がん

  • 胃内視鏡検査(胃カメラ)
  • 感度: 95〜100%
  • 特異度: 95〜100%
  • 有効性: 感度と特異度が非常に高く、胃がんの早期発見に最も効果的な検査です。胃内視鏡は、胃がんのリスクが高い人に対して強く推奨されます。
  • バリウム検査(胃X線造影検査)
  • 感度: 75〜95%
  • 特異度: 80〜90%
  • 有効性: 胃内視鏡検査よりも感度・特異度はやや低いですが、定期健診などで使用されることが多く、早期の胃がんを発見するのに役立ちます。

8. 卵巣がん

  • 経膣超音波検査
  • 感度: 70〜80%
  • 特異度: 80〜95%
  • 有効性: 卵巣がんのスクリーニングとしては感度・特異度がやや低く、卵巣がんを早期に発見するのが難しいことがあります。特にリスクが高い女性には、定期的な検査が推奨されます。

まとめ

各がんスクリーニング検査の有効性は、感度と特異度に依存します。多くのスクリーニング検査では、感度が高いほど早期発見が可能ですが、特異度が低いと偽陽性のリスクが高まる可能性があります。したがって、スクリーニング検査を受ける際は、リスクに応じた適切な検査方法を選択し、必要に応じて医師と相談することが重要です

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