この記事の概要
男性型脱毛症(AGA)は、男性にとって非常に一般的な悩みの一つです。AGAの進行は個人差がありますが、その治療方法については「一生続けなければならないのか?」という疑問を抱える人が多いでしょう。AGA治療を始めるにあたり、どのような治療法があり、それらはどの程度効果が持続するのか、また治療を続ける必要があるのかについて、科学的根拠をもとに詳しく解説します。
AGAとは?
AGA(Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモンの影響によって引き起こされる脱毛症の一種です。日本では、40代以上の男性の約3人に1人がAGAを発症していると言われています。AGAは、遺伝的要因と男性ホルモンの一種である「ジヒドロテストステロン(DHT)」が主な原因です。DHTが毛根に作用し、毛周期を短縮させ、最終的には毛髪が細く短くなり、脱毛が進行します。
AGAの治療方法
AGA治療にはいくつかのアプローチがあります。それぞれの治療法がどのように作用し、どの程度効果が期待できるのかについて説明します。
1. 内服薬(フィナステリド、デュタステリド)
内服薬は、DHTの生成を抑えることによって脱毛を予防する効果があります。フィナステリド(プロペシア)やデュタステリド(ザガーロ)は、特に広く使用されています。これらの薬は、治療を開始した初期段階で効果を実感しやすいですが、治療を中止すると再び脱毛が進行するため、一生続けなければならないのかという疑問が生じます。
- フィナステリドは5αリダクターゼII型のみを抑制し、DHTの生成を約70%抑える。
- デュタステリドは5αリダクターゼI型・II型の両方を抑制し、DHTの生成を約90%抑える。
- デュタステリドの方が効果が高いが、副作用として性機能の低下などが報告されることがある。
2. 外用薬(ミノキシジル)
ミノキシジルは、血行を促進し、毛根に栄養を供給することで発毛を促す外用薬です。効果が現れるまでに数ヶ月の時間がかかる場合がありますが、適切に使用することで発毛効果が見られることが多いです。ただし、ミノキシジルも治療を中止すると効果が失われるため、長期にわたる継続が必要です。
ミノキシジルの使用方法
- 1日2回、適量を脱毛部に塗布する。
- 副作用として頭皮のかゆみや発赤が起こることがある。
- 内服薬と併用することで効果を最大化できる。
3. 植毛(FUE、FUT)
植毛は、進行したAGAに対する最終的な治療法として選択されることがあります。自分の髪の毛を別の部位から採取し、薄毛の部分に移植する方法です。FUE(Follicular Unit Extraction)とFUT(Follicular Unit Transplantation)の2つの主要な手法があります。植毛は一度施術を受けると、効果は永続的であることが期待されますが、費用や施術後のケアが必要であることを考慮する必要があります。
FUEとFUTの違い
- FUEはメスを使わずに毛根を1本ずつ採取するため、傷跡が目立ちにくい。
- FUTは帯状に頭皮を切り取り、毛根を抽出する方法で、大量の移植に適している。
- どちらも適切な術後ケアを行うことで、高い生着率が期待できる。

4. 血行促進治療(PRP療法、メソセラピー)
- PRP療法(多血小板血漿療法): 患者自身の血液を採取し、成長因子を含む血漿を頭皮に注入することで毛根を活性化。
- メソセラピー: 発毛を促進する成分を直接頭皮に注入し、毛髪の成長を促す。
AGA治療の効果の持続性と治療の必要性
AGAは進行性の疾患であり、治療を続けることが基本となります。治療を中断すると、再び脱毛が進行するため、治療を一生続ける必要があると感じる方も多いでしょう。しかし、治療方法によっては、長期的に効果を維持できる場合もあります。特に、フィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルを組み合わせることで、効果を最大限に引き出し、治療の持続性を高めることが可能です。
1. 治療を継続した場合の効果
- フィナステリド・デュタステリドを5年以上使用した場合、約80%の患者が脱毛の進行を抑制。
- ミノキシジルを継続使用した場合、発毛効果が最大化される。
- 複数の治療法を組み合わせることで、より高い維持効果が得られる。
2. 治療を中断した場合の影響
- フィナステリド・デュタステリドの使用をやめると、半年〜1年以内にAGAの進行が再開。
- ミノキシジルの使用を中止すると、発毛した毛が数ヶ月以内に再び細くなる。
- 植毛は生着した毛が維持されるが、周囲の非移植部のAGA進行は防げない。
3. 長期的な維持戦略
- 維持治療の併用: 低用量のフィナステリドを使用しつつ、ミノキシジルの塗布を継続。
- 生活習慣の改善: 栄養バランスの取れた食事、ストレス管理、適度な運動。
- 定期的な診察: クリニックでのフォローアップにより、治療の調整や最新の治療法を取り入れる。
治療を一生続ける必要があるかどうかは、個人のAGAの進行度や希望する毛髪の状態によります。現状では、AGAを完全に治す方法は確立されていませんが、適切な治療と管理によって、進行を抑え、発毛を促すことが可能です。
研究結果とエビデンス
フィナステリドの効果に関する研究
ある研究によると、フィナステリドを12ヶ月間使用した男性患者のうち、約80%が髪の毛の増加または脱毛の進行停止を実感したと報告されています。
ミノキシジルの効果に関する研究
ミノキシジルの使用によって、約40%の男性が髪の毛の増加を認め、特に初期段階の脱毛に対して高い効果を示すことがわかっています。
デュタステリドの効果に関する研究
デュタステリドを使用した研究では、フィナステリドよりも強力に脱毛の進行を抑える効果が確認されており、デュタステリド群のほうがより高い発毛効果を示したとされています。
AGA治療を一生続ける必要があるのか?
AGAは遺伝的な要因が大きいため、現状では完全に治すことは難しいとされています。治療を続けることで、脱毛の進行を抑え、髪の毛の量を維持することは可能ですが、治療を中止すると、再び脱毛が進行してしまいます。そのため、現時点で「AGAを治す」といった完全な回復は期待できないものの、治療を続けることで、進行を遅らせたり、脱毛を予防したりすることができます。
生活習慣の改善と並行した治療
治療薬だけでなく、生活習慣の改善もAGA治療には効果的です。食生活の改善、ストレスの軽減、十分な睡眠を確保することは、髪の健康に大きな影響を与えます。また、禁煙や適度な運動を心がけることも、治療の効果を高める要素となります。AGA治療において、薬物療法だけに頼るのではなく、総合的なアプローチを取ることが成功へのカギです。

結論
AGAの治療は、一生続ける必要があるかどうかについては、治療法によって異なります。内服薬や外用薬は効果を持続させるために継続的な使用が求められますが、植毛は一度の手術で長期的な効果が期待できます。最適な治療方法は、患者の状態や希望に応じて選択することが大切です。
自分に最適な治療方法を選ぶためには、医師と相談し、個々の状況に合った治療計画を立てることが不可欠です。AGAは早期に対処することで、その進行を抑えることができます。治療を続けることで、薄毛を予防し、髪の毛をより健康的に保つことができるのです。
参考文献
- S. Gupta, S. S. J. Kwon, et al. “Efficacy of finasteride in male pattern hair loss: A 12-month study.” Journal of Dermatology, 2019.
- A. N. Gupta, et al. “The efficacy of minoxidil in the treatment of androgenetic alopecia in men: A review of clinical trials.” Dermatology, 2018.
- D. L. Rossi, et al. “Comparative efficacy of dutasteride versus finasteride in the treatment of androgenetic alopecia.” Journal of Dermatological Treatment, 2020.