この記事の概要
男性型脱毛症(AGA)は、成人男性に広く見られる進行性の脱毛症であり、多くの男性が悩んでいます。薄毛が進行する前に適切な治療を受けることで、進行を遅らせることができるため、AGA治療に対する関心は高まっています。しかし、AGA治療は一般的に保険適用外となるため、費用がかかることが課題となります。本記事では、AGA治療における保険適用の条件や費用を抑える方法について、専門的な視点から解説します。また、AGA治療を受ける上で考慮すべき要素についても詳しく説明します。
AGAとは?
AGA(Androgenetic Alopecia)は、男性ホルモン(テストステロン)が変化してできるジヒドロテストステロン(DHT)が、毛根の働きを弱めて髪の成長を妨げることによって引き起こされる進行性の薄毛です。特に、成人男性に見られ、前頭部や頭頂部から髪の毛が徐々に薄くなることが特徴です。進行すると、最終的には髪の毛がほとんど生えない状態に至ることもあります。
AGAの発症は遺伝的要因が大きいため、父親や母親から受け継いだ遺伝子が影響を与えます。また、加齢やストレス、食生活の乱れなども進行を早める原因となることがあります。
AGAの進行を遅らせるためには、早期の対応が非常に重要です。特に、初期段階で治療を始めることで、効果的に進行を抑えることが可能です。
AGA治療の一般的な方法
AGAの治療方法は様々であり、個人の状態に合わせた治療法を選択することが大切です。代表的な治療方法を以下に紹介します。
1. 内服薬
- フィナステリド
フィナステリドは、DHTの生成を抑制することで脱毛の進行を遅らせる薬です。DHTは、AGAの原因となるホルモンで、髪の成長を妨げる作用があります。フィナステリドを服用することで、このホルモンの生成を抑えることができ、脱毛の進行を予防します。 - デュタステリド
デュタステリドはフィナステリドと同様にDHTの生成を抑える薬ですが、フィナステリドよりも効果が強力で、DHTの生成をより広範囲に抑えることができます。フィナステリドで効果が見られない場合や、さらに強力な治療を希望する場合には、デュタステリドを選択することがあります。
2. 外用薬
- ミノキシジル
ミノキシジルは、血行を促進し、毛根に必要な栄養を届けることで髪の成長を助ける外用薬です。AGA治療においては、ミノキシジルを頭皮に塗布することで発毛を促進し、髪の成長をサポートします。ミノキシジルは、内服薬と併用することもあります。
3. 自毛植毛
自毛植毛は、自分の健康な髪の毛を薄毛部分に移植する手術です。特に進行したAGAに対して有効な治療法であり、自然な仕上がりを期待できます。自毛植毛には、FUE(Follicular Unit Extraction)やFUT(Follicular Unit Transplantation)などの手法があります。
- FUEは、毛根を一つ一つ採取し、薄毛部分に移植する方法で、傷跡が目立ちにくいという特徴があります。
- FUTは、頭皮を一定の範囲で切り取って毛髪を移植する方法で、手術後に比較的大きな傷跡が残りますが、広範囲に移植が可能です。
4. 注入療法
注入療法は、成長因子やビタミン、ミネラルを頭皮に直接注入して、髪の成長を促す治療法です。血行を促進し、毛根に栄養を供給することで発毛をサポートします。プラズマ療法(PRP治療)や、ケラチン注入などが含まれます。

AGA治療は保険適用されるのか?
AGA治療は原則保険適用外
AGA治療は、基本的に健康保険が適用されません。これは、AGAが生命に関わる病気ではなく、美容的な治療と見なされるためです。健康保険が適用される治療は、命に関わる疾患や、生活に支障をきたす病気が対象となり、AGAはその対象外となります。
したがって、AGA治療を受ける際には、治療費がすべて自己負担となり、費用が高額になることが一般的です。AGA治療に関しては、保険適用外という点を理解したうえで治療を選択する必要があります。
例外的に保険が適用される場合
AGA自体は保険適用外ですが、以下のような場合には保険が適用されることがあります。
- 頭皮に炎症がある場合
AGAだと考えて受診した結果、脂漏性皮膚炎や接触性皮膚炎などの頭皮の炎症が確認された場合、その炎症に対する治療には保険が適用されます。炎症の治療を受けることで、AGAの症状が軽減することがあります。 - 円形脱毛症の治療
円形脱毛症は自己免疫疾患であり、AGAとは異なります。円形脱毛症の治療には、ステロイド薬や免疫抑制薬が使用されることがあります。円形脱毛症に対しては、保険が適用されるため、治療費が軽減されます。 - AGAの合併症としての感染症や頭皮疾患の治療
AGAによる頭皮の乾燥や炎症が悪化し、感染症を引き起こした場合、その治療には保険が適用されることがあります。
ただし、AGA治療と他の疾患治療を同時に行う場合、「混合診療」として一部自己負担が増えることがあるため、診療内容については医師とよく相談することが重要です。
AGA治療の費用と医療費控除
AGA治療は保険適用外のため、全額自己負担となります。また、医療費控除の対象にもならないことが一般的です。国税庁の所得税基本通達では、「容姿を美化し、または容貌を変えるための費用は医療費として認められない」とされています。そのため、AGA治療の費用を医療費控除として申請することはできません。
AGA治療にかかる費用の目安
- 内服薬
フィナステリドやデュタステリドなどの内服薬は、月額数千円から1万円程度が目安となります。ジェネリック医薬品を利用することで、費用を抑えることが可能です。 - 外用薬(ミノキシジル)
ミノキシジルの外用薬も、月額数千円程度で購入できます。継続的に使用する必要があるため、治療期間中にかかる費用は長期にわたります。 - 自毛植毛
自毛植毛は手術費用がかかり、1回あたり30万円から100万円以上の費用がかかることがあります。植毛の範囲や手術方法によって、費用が大きく異なります。 - 注入療法
注入療法の費用は治療の回数や範囲により異なりますが、1回の治療
で数万円から10万円程度かかることがあります。
AGA治療の費用を抑える方法
AGA治療は長期的に続ける必要があるため、治療費が高額になりやすいです。以下の方法で、費用を抑えることができます。
1. 早期に治療を始める
薄毛の進行を遅らせるためには、早期に治療を始めることが重要です。初期段階であれば、薬物治療や外用薬で進行を遅らせることができ、高額な治療を避けることが可能です。進行が早いと、治療にかかる費用が増える可能性が高いため、早期の治療をおすすめします。
2. ジェネリック薬を利用する
フィナステリドやミノキシジルなどの治療薬は、ジェネリック薬を利用することで費用を抑えることができます。ジェネリック薬は、同じ有効成分を含んでいるため、効果は変わらず、価格が大幅に安くなります。
3. オンライン診療を利用する
オンライン診療を活用することで、通院にかかる時間や交通費を節約できます。自宅で治療を受けられるため、プライバシーを守りつつ、気軽に治療を継続できます。オンライン診療を提供しているクリニックでは、治療費が割安になることもあるため、費用面でのメリットがあります。
4. 定期的なフォローアップを受ける
AGA治療の進捗を定期的に確認し、必要に応じて治療法を見直すことが重要です。長期的に治療を続けるためには、専門医との連携を深め、最適な治療方法を維持することがコスト削減にもつながります。
まとめ
AGA治療は基本的に保険適用外であり、全額自己負担となります。治療を始める際には、費用面の負担を抑えるために、早期の治療開始やジェネリック医薬品の利用、オンライン診療の活用などの方法を検討することが大切です。進行が遅い段階で治療を開始すれば、比較的低コストで効果的な治療を行うことができます。
AGA治療を受ける際には、治療法や費用についてよく理解し、計画的に治療を進めることが重要です。専門的なアドバイスを受けながら、自分に合った治療法を選ぶことが、AGA克服への近道となります。
参考文献
円形脱毛症の治療と保険適用
AGAに関する最新の研究