日本皮膚科学会で推奨されるAGAのガイドライン

遺伝子

この記事の概要

日本皮膚科学会のAGAガイドラインは、AGA(男性型脱毛症)の診療における治療法の推奨度を5段階で評価しています。推奨される治療法としては、フィナステリドやデュタステリドの内服薬、ミノキシジルの外用薬が挙げられています。これらは、AGA治療において有効性が確認されており、推奨度A(強く推奨)と評価されています。ガイドラインではまた、植毛やその他の治療法も評価されています。

病態 

一般的に男性ホルモンは骨・筋肉の発達を促し,髭や胸毛などの毛を濃くする方向に働く.しかし,前頭部や頭頂部などの男性ホルモン感受性毛包においては逆に軟毛化現象を引き起こす.男性ホルモン感受性毛包の毛乳頭細胞には男性ホルモン受容体が存在するが,髭や前頭部,頭頂部の毛乳頭細胞に運ばれたテストステロンはII型5α―還元酵素の働きにより,さらに活性が高いジヒドロテストステロン(DHT)に変換されて受容体に結合する.DHTの結合した男性ホルモン受容体は髭では細胞成長因子などを誘導し成長期が延長する.逆に前頭部や頭頂部の男性ホルモン感受性毛包においては,DHTの結合した男性ホルモン受容体はTGF-β やDKK1などを誘導し毛母細胞の増殖が抑制され成長期が短縮することが報告されている14).

診断 

男性型脱毛症の診断は問診により家族歴,脱毛の経過などを聴き,視診により額の生え際が後退し前頭部と頭頂部の毛髪が細く短くなっていることを確認する.拡大鏡やダーモスコピーの使用も診断の手助けとなる. わが国では男性型脱毛症の分類として緒方の分類9),欧米ではNorwoodの分類があるが4),現在わが国ではNorwoodの分類に高島分類の頭頂部が薄くなるII vertex を加えた分類が広く使用されている8).女性型脱毛症の分類としてはLudwig分類が知られているが,より早期からの診断や鑑別診断を考慮した診断基準が提唱されている15)16). 男性型脱毛症の診断は比較的容易であるが,ゆっくりと頭髪が抜け,頭部全体が疎になる円形脱毛症の亜型,女性型脱毛症においては,慢性休止期脱毛,膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患に伴う脱毛,貧血,急激なダイエット,その他の消耗性疾患などに伴う脱毛,治療としてのホルモン補充療法や薬剤による脱毛などを除外することが大切である.

女医

治療 

わが国における男性型脱毛症の治療については,以下のClinical Question(CQ)で検証する(表1参照).参考資料として,海外で発表された男性型脱毛症の治療手順やガイドラインを列挙する2)3)5)6).

参考文献

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン作成委員会:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン,日皮会誌,2007; 117: 1855―1925.

Drake LA, Dinehart SM, Farmer ER, et al: Guidelines of care for androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 1996; 35: 465―469.

Shapiro J, Price VH: Hair regrowth: therapeutic agents, Dermatol Clin, 1998; 16: 341―356.

Olsen EA: Current and novel methods for assessing efficacy of hair growth promoters in pattern hair loss, J Am Acad Dermatol, 2003; 48: 253―262.

Olsen EA: Pattern hair loss in men and women. In: Olsen EA, ed. Disorders of hair growth: diagnosis and treatment, 2nd Ed, New York: McGraw-Hill, 2003: 321―362.

Olsen EA, Messenger AG, Shapiro J, et al: Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss, J Am Acad Dermatol, 2005; 52: 301―311.

坪井良治:男性型脱毛症,日皮会誌,2008; 118: 163―170.

Takashima I, Iju M, Sudo M: Alopecia androgenetica. Its incidence in Japanese and associated condition. In: Orfanos CE, Montagna W, Stuttgen G, eds. Hair Research, Berlin: Springer Verlag, 1981; 287―293.

板見 智:日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査,日本医事新報,2004; 4209: 27―29.

Hamilton JB: Male hormone stimulation is a prerequisite and an incitant in common baldness, Am J Anatomy, 1942; 71: 451―480.

Li R, Brockschmidt FF, Kiefer AK, et al: Six novel susceptibility Loci for early-onset androgenetic alopecia and their unexpected association with common diseases, PLoS Genet, 2012; 8: e1002746.

Birch MP, Messenger JF, Messenger AG: Hair density, hair diameter and the prevalence of female pattern hair loss, Br J Dermatol, 2001; 144: 297―304.

記事の監修者