日本皮膚科学会で推奨されるAGAのガイドライン

遺伝子

この記事の概要

日本皮膚科学会のAGAガイドラインは、AGA(男性型脱毛症)の診療における治療法の推奨度を5段階で評価しています。推奨される治療法としては、フィナステリドやデュタステリドの内服薬、ミノキシジルの外用薬が挙げられています。これらは、AGA治療において有効性が確認されており、推奨度A(強く推奨)と評価されています。ガイドラインではまた、植毛やその他の治療法も評価されています。

AGA症状のセルフチェック

AGAは、脱毛が急速に進行するわけではなく、徐々に症状が現れます。そのため、早期発見が重要です。自分でできるセルフチェックを行い、疑わしい症状があれば専門医を受診することが推奨されます。以下のチェックリストを参考に、自分の状態を確認しましょう。

1. 生え際の後退

AGAが進行すると、額の生え際が後退し、髪の毛の生え際が以前より後ろに下がっていることに気づくことがあります。特に、額の両側から後退が見られる場合や、生え際がギザギザになってきた場合は注意が必要です。この症状は、一般的に前頭部型のAGAの特徴です。

チェック方法

鏡で自分の顔を正面から見て、生え際のラインが後退しているかどうか確認しましょう。

髪の毛を軽く引っ張った際に、額の生え際の毛が薄く見える場合もAGAの兆候です。

2. 頭頂部の髪の薄さ

AGAが進行するにつれて、頭頂部やつむじ周辺の髪が薄くなることがあります。特に髪を分けたときに、分け目の部分が目立つようになるのが特徴的です。この段階では、まだ髪の本数自体は多く見えますが、髪の毛が細く、薄い毛が増えることによって薄毛が目立ちます。

チェック方法

髪の分け目を数回変えて、つむじ付近が目立っていないか確認します。

頭頂部の髪を触ってみて、髪の毛のコシが無くなったり、柔らかくなったりしていないかチェックします。

3. 髪のボリュームの減少

髪のボリュームが減少してくると、脱毛の進行が始まったサインかもしれません。特に髪を洗ったり乾かしたりした後に、以前よりも多くの髪の毛が抜けるように感じる場合、AGAの可能性があります。抜け毛は、生活習慣やストレスの影響を受けることもありますが、繰り返し抜け毛が多くなる場合には、AGAを疑う必要があります。

チェック方法

シャンプー後に抜け毛が目立つ場合、床に落ちた髪の本数を数えてみましょう。抜け毛が多い場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。

髪を乾かす際に、以前よりも手に絡みつく髪の量が多くなった場合も、進行している兆候かもしれません。

4. 髪質の変化

AGAが進行すると、髪の毛の質が変化し、毛の太さやコシが無くなり、細く柔らかくなることがあります。これにより、髪の毛全体のボリューム感が減少し、薄毛が目立ちやすくなります。

チェック方法

髪を指でつまんでみて、以前よりも細く感じたり、柔らかくなった場合は注意が必要です。

髪の毛がしっかりと立ち上がらず、ボリュームが出にくくなったと感じる場合もAGAの進行を示すサインです。

AGAの原因と病態

AGAの原因は、主に遺伝的要因とホルモンバランスに関係しています。男性ホルモンの一種であるテストステロンが、5α-還元酵素の働きによって、さらに強力なホルモンである**ジヒドロテストステロン(DHT)**に変換されます。このDHTが毛根に作用することにより、毛髪の成長期が短縮され、髪の毛が細くなり、最終的には脱毛が進行します。

男性ホルモンの影響

男性ホルモンは、骨や筋肉の発達を助け、髭や胸毛の成長を促進しますが、同時に、前頭部や頭頂部など、男性ホルモン感受性の高い毛包においては、脱毛を引き起こす原因となります。これにより、AGAが進行し、髪の成長が抑制されます。

DHTの作用

DHTは、髪の成長に直接的に悪影響を及ぼすホルモンで、毛母細胞の増殖を抑制し、髪の成長期を短縮させます。その結果、髪の毛は短く、細くなり、最終的には抜けていきます。

AGAの診断方法

AGAの診断は、問診と視診を中心に行われます。問診では、家族歴や脱毛の経過について聴取し、視診では額の生え際や頭頂部の髪の細さを確認します。また、拡大鏡やダーモスコピーを使用して、毛根の状態や脱毛の進行度を確認することも重要です。

Norwood分類

AGAの進行度を評価するためにNorwood分類が用いられます。この分類法では、進行度に応じて1から7までの段階に分け、AGAの進行を明確に示します。Norwood分類は、額の生え際の後退や頭頂部の薄毛の進行具合を基に診断します。

Norwood分類の特徴

タイプI(軽度): 生え際がわずかに後退し、額の両側にわずかな薄毛が見られる段階です。

タイプIV(中等度): 額の生え際が明らかに後退し、前頭部と頭頂部の髪の毛が薄くなります。

タイプVII(高度): 額の生え際と頭頂部がほとんど完全に脱毛し、薄毛が広範囲に進行しています。

AGA治療法

AGAの治療には、内服薬、外用薬、そして外科的な治療方法である植毛があります。日本皮膚科学会のAGAガイドラインに基づき、推奨される治療法は以下の通りです。

女医

1. フィナステリド(内服薬)

フィナステリドは、DHTの生成を抑制することで、AGAの進行を抑える治療薬です。フィナステリドは、内服薬であり、患者の体内でDHTの生成を阻害することで、脱毛を防ぐ効果があります。特に、進行中のAGAに効果的です。

2. デュタステリド(内服薬)

デュタステリドフィナステリドと同様に、DHTの生成を抑制しますが、フィナステリドよりも強力に働きます。デュタステリドは、より高い効果を持ち、AGAの治療において強力的な選択肢とされています。デュタステリドは、DHTの生成をより広範囲で抑制するため、フィナステリドで効果が見られなかった患者に対しても有効とされています。

3. ミノキシジル(外用薬)

ミノキシジルは、外用薬として最も広く使用されているAGA治療薬の一つです。血管拡張作用を持ち、毛根に十分な血液を供給することで、毛髪の成長を促す効果があります。初期の段階では特に効果が高く、脱毛が始まったばかりの患者において、髪の毛の再生が期待できます。

ミノキシジルは頭皮に直接塗布するタイプの薬剤で、使用を続けることにより、髪の毛が太く、強くなる効果が見込めます。また、ミノキシジルは男性だけでなく女性にも使用可能な製品があり、女性型脱毛症にも一定の効果があります。

4. 植毛

進行したAGAの場合、植毛は効果的な治療方法です。植毛は、後頭部などの薄毛にならない部分から健康な髪の毛を採取し、薄毛が進行している部分に移植する方法です。これにより、薄毛の部分に新たに髪の毛が生え、見た目の改善が期待できます。

植毛は、自然な仕上がりと持続的な効果を提供する治療法ですが、高額な費用と手術が必要な点がデメリットといえるでしょう。しかし、植毛は一度の施術で長期間にわたって安定した効果を期待できるため、進行が著しい場合には有効な選択肢です。

5. PRP療法(自己血小板血漿治療)

PRP療法は、患者の血液を採取し、血液中の血小板を濃縮した成分(血小板血漿)を再注入する治療法です。この治療は、髪の成長を促進し、脱毛を抑制する効果があるとされています。PRP療法は、特に髪の毛の再生を促進するため、内服薬や外用薬と併用する場合に有効です。

6. レーザー治療

低出力レーザー(LLLT)は、毛根を刺激して髪の成長を促進する治療法です。特に、髪の成長が遅い場合や、まだ髪が完全に抜けていない段階で効果が期待できます。家庭用の低出力レーザー機器も販売されており、手軽に使用できる点がメリットです。

AGAガイドラインに基づく治療の進め方

日本皮膚科学会が提案するAGAガイドラインでは、以下の治療ステップが推奨されています。

ステップ1:初期治療

フィナステリドまたはデュタステリドの内服薬が最初に選ばれます。これらの薬剤は、DHTの生成を抑制し、髪の成長を促進するため、AGAの進行を抑える最も効果的な方法です。

初期段階では、内服薬を中心に治療を行い、効果を確認します。

ステップ2:外用薬の追加

ミノキシジルは、内服薬と併用することで、効果を高めることができます。特に、髪の成長が遅い部分に効果的に作用します。

ミノキシジルを使いながら、治療の進行をモニターします。

ステップ3:進行したAGAへの対応

AGAが進行している場合、植毛やPRP療法など、外科的な治療や追加的な治療法が検討されます。

進行度に応じて、必要な治療法を選択し、定期的に経過をチェックします。

まとめ

AGAは、進行性の脱毛症であり、適切な治療法を選ぶことが進行を抑制するために重要です。AGAの症状が現れた初期段階で早期に治療を開始することで、脱毛の進行を遅らせることができます。セルフチェックを行い、疑わしい症状が現れた場合は、専門医の診断を受けることをおすすめします。

治療法としては、内服薬(フィナステリドデュタステリド)や外用薬(ミノキシジル)の併用が推奨されており、進行が進んだ場合には植毛やPRP療法、レーザー治療などが選択肢となります。

AGAは、遺伝的要因やホルモンバランスに関わるため、完全に治癒することは難しい場合もありますが、治療を続けることで脱毛の進行を防ぎ、髪の毛の再生を促進することが可能です。専門医と相談し、自分に合った治療法を選ぶことが、長期的に健康で美しい髪を保つ鍵となります。

参考文献

日本皮膚科学会 2017年版 AGAガイドライン:https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

Shapiro J, Price VH: Hair regrowth: therapeutic agents, Dermatol Clin, 1998; 16: 341-356.

Olsen EA, Messenger AG, Shapiro J, et al: Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss, J Am Acad Dermatol, 2005; 52: 301-311.

Drake LA, Dinehart SM, Farmer ER, et al: Guidelines of care for androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 1996; 35: 465-469.

参考文献

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf

皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン作成委員会:皮膚悪性腫瘍診療ガイドライン,日皮会誌,2007; 117: 1855―1925.

Drake LA, Dinehart SM, Farmer ER, et al: Guidelines of care for androgenetic alopecia, J Am Acad Dermatol, 1996; 35: 465―469.

Shapiro J, Price VH: Hair regrowth: therapeutic agents, Dermatol Clin, 1998; 16: 341―356.

Olsen EA: Current and novel methods for assessing efficacy of hair growth promoters in pattern hair loss, J Am Acad Dermatol, 2003; 48: 253―262.

Olsen EA: Pattern hair loss in men and women. In: Olsen EA, ed. Disorders of hair growth: diagnosis and treatment, 2nd Ed, New York: McGraw-Hill, 2003: 321―362.

Olsen EA, Messenger AG, Shapiro J, et al: Evaluation and treatment of male and female pattern hair loss, J Am Acad Dermatol, 2005; 52: 301―311.

坪井良治:男性型脱毛症,日皮会誌,2008; 118: 163―170.

Takashima I, Iju M, Sudo M: Alopecia androgenetica. Its incidence in Japanese and associated condition. In: Orfanos CE, Montagna W, Stuttgen G, eds. Hair Research, Berlin: Springer Verlag, 1981; 287―293.

板見 智:日本人成人男性における毛髪(男性型脱毛)に関する意識調査,日本医事新報,2004; 4209: 27―29.

Hamilton JB: Male hormone stimulation is a prerequisite and an incitant in common baldness, Am J Anatomy, 1942; 71: 451―480.

Li R, Brockschmidt FF, Kiefer AK, et al: Six novel susceptibility Loci for early-onset androgenetic alopecia and their unexpected association with common diseases, PLoS Genet, 2012; 8: e1002746.

Birch MP, Messenger JF, Messenger AG: Hair density, hair diameter and the prevalence of female pattern hair loss, Br J Dermatol, 2001; 144: 297―304.

記事の監修者